【企画】ハローフェアリーテイル【d!】 (ページ13)

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衣擦れの音が無くなり、「良さそうやね」と孔雀は羽を畳む。そして後ろから出てきた少女の姿に全匹が驚きの声をあげることとなる。
「黒ぉ？！」
「いや喪服！せっかくこんな可愛い子なのに？！」
プギプギ、ギィギィ。鳴き声だけでも非難されている事が分かる。それでも少女は気にしなかった。飾り気のない黒のワンピース。それはまさに自らの命を捨てようとしていた彼女にとって、求めていた色だったから。
　少女は捨て子だった。物心ついた時には、この街の教会で苦痛の日々を過ごしていた。私利私欲と外面の為に金を遣う高位貴族は、貧しい教会と身寄りのない子供たちには一等厳しかったから。教会を出なければならない年齢になっても身寄りは無く、その身一つで路地を歩き、何かに導かれるようにあの布屋に辿り着いていた。少女は思う。これは神の思し召しだと。ならば背く訳にはいかない。ふと視線を動物たちから城へ向けると、大きな玄関の周りだけを茨が避けている。少女が来た時には塞がれていたのに。すっ、と息を呑んだ少女は歩き出す。散々騒いでいた動物たちもその様子に気づき、まるで彼女を護衛するかのように周りに着いて歩いた。

　玄関を抜けた後、まるで意思があるように道を作る茨に誘われるがまま進み、やがて最上階の部屋に辿り着く。そこは豪奢な灰色の扉が半開きになっており、少女は興味を持って覗き込む。すると茨が蠢き、少女と動物たちを隔てた。ギャアギャアと騒ぐ鳴き声に少し申し訳なく思いながらも、部屋の中が気になった少女はそのままするりと入り込んだ。
　その部屋は中央にベッドが置かれているだけの陽当たりの良い部屋。そしてそのベッドからは、すうすうと呼吸が聞こえ、少女は近づく。
(なんて、美しい人なんだろう。)
　少女の頭の中はその事でいっぱいになった。間接的に当たっている太陽でキラキラと輝くプラチナブロンド、長い睫毛にきめ細やかな肌。そのまま身体に目を向ければ胸の膨らみはなく、言い伝えとは違って男性であったが最早どうでも良かった。それ程までに美しい人なのだ。嫉妬、羨望、崇拝。様々な感情が駆け巡り、少女はぽつりと声を漏らした。

「わたしだけ、しってる…わたしだけの、ひと……」

　耳を澄まさなければ聞こえないはずの声量だったが、その声は部屋に響き、同時に強い風が吹いた。立ってられない程の風に少女は蹲り目を瞑る。
　風が収まり目を開いた少女は、自分の目に映る光景に呼吸が止まった。

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