4.受けてみろ ページ5
「森山に聞いた感じ、割と的確なこと言ったみたいだが…本当にいいのか?」
夜、課題に取り掛かっていると幸男から電話が掛かってきた。昼のことがどうにも気になるらしい。そこでわざわざ様子を伺おうとしてくれているようだ。昔から、私に対する心配事があれば、こうしてよく電話を掛けてくれた。
今日なんか、時間的に部活から帰って来てやっと休める時間だろうに。
「うーん…?どうなんだろう」
気にかけてくれる幼馴染には悪いが、曖昧な返事しかできない。
「メモ取ってるとこ見て、途中でやめるわけにはいかなかったし…それを実行して、ナンパが成功しても嫌だし…」
まだ成功すると決まったわけじゃないから、落ち込みきれないし…
「じゃあこれからも、応援はするってことか?」
幸男は不満そうな声を上げた。多分、応援することが私に損に働くってことが分かっていて、止めろって言いたい。だけど、私の意思は尊重したい。ほんとに、優しいってもんじゃない。
ナンパを応援するって言ったら、幸男が困ってしまう。でも、私は一生懸命な人が大好きなのだ。
「…じゃあ、頑なに断り続けてる誘いを、一回受けてみるのはどうだ?」
返答に困って黙り込む私に、幸男はまた別の提案をしてきた。
「げ、あれを…?」
ナンパを繰り返す彼を知っているだけに、あれは誰も引っかからないから最終的に私にっていう感じな気がする。
「他の誰かよりも先に、誘いに乗っかってみるのも手かもしれないぞ」
私の考えを重々承知している様子で、幸男は続ける。
「でも次に森山が何か借りに来るのいつよ?そんなじゃんじゃん忘れ物しないでしょ。その間に成功してるかもしれないし」
「お前が返しに行ったときに誘えばいいじゃねえか」
「わ、私が!?誘うの!?」
とんでもない提案に、キャスター付きの椅子に乗って後ろにのけぞってしまった。コロコローッと割と机から離れてしまう。アトラクションか。
「お、おい。A?」
スマホをハンズフリーにして机の上に置いて話していたため、声がなかなか遠い。
「むりー!だよー!じゃあね、切るね!気にかけてくれてありがとう!」
高速でまた、コロコローッと戻ってきて言うだけ言って切ってしまった。
ごめんなさい、と心の中で謝っておいた。
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作者名:かまぼこ板 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年5月15日 23時