たまゆら花魁記 〜吉原編〜 【2】

よしわら53 ページ3

私は部屋に戻るといつものように大貴が来るのを待っていた




大貴
『入るぞー！
今日も夜の客は大入りになりそうだな！』




無邪気に戸を開け変わらぬ様子で部屋に入る大貴

けれど私は大貴に鋭い眼差しを向けた………

きっとこんな顔つきで大貴を見たのは始めてだろう





A
『大貴……………

なんで葉月にお客なんてとらせているの？』




大貴
『はぁ？何の事言ってんだ？笑』




A
『ごまかさないで………

葉月に聞いたから…………

大貴の為にしている事だって』




そう伝えると大貴は一度目を閉じ
その瞳がもう一度こちらを向いた時にはあの夜のような冷めきった表情をしていた




大貴
『そう…

俺はあいつを利用してるんだ…………』





A
『なんでそんな事？！………………』




大貴
『俺はこの町に染まりきった

最低なやつなんだよ…………………』





そう言ってそのまま大貴は部屋を出て行った


引き止める事もそれ以上問いただす事も出来なかった………………



それは大貴の冷めきった瞳の奥が深い悲しみの色をしていたから……………



大貴の太陽の様な笑顔の奥底にはいつもあの悲しみが潜んでいだのかもしれない……………

よしわら54→←よしわら52

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す