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パパの娘〜if〜 ページ10

岩融side

「かえさなくちゃいけない」

「…」

「かえさないとAがあぶないことになる
Aのために、げんせに…」

自分に言い聞かせるよう、同じ言葉を繰り返す小さな天狗。

部屋の隅で顔を伏せ、体を震わせる姿は小さな体をさらに小さく見せた。

Aを帰す。
元々居た世界に帰るだけ。
同じ時を生きる者たちの元へ行くだけだ。

ただ、それだけ…

「…なぜですか」

「今剣…」

「なぜ、かえさなくてはならないの?!
いちど、たったのいちどでも、Aをてばなし、さげすんだものたちのいるばしょへ!!!」

上げられた顔は既にぐちゃぐちゃで、大きな瞳から水晶のような涙が零れ落ちる。

嗚咽を零し、やり場のない怒りを俺へとぶつける。

何度も何度も…

「なんでぇ…A…」

「落ち着いたか?」

「岩融…くるしいです…むねが、ばらばらになってしまいそう、です」

この場でかけてやれる最良の言葉を俺は知らない。
いや、知っているのかもしれないが口から出すことが出来ない。
今剣が思っていることは、我ら三条皆が思っていること。
皆、Aと離れたくない。

「Aとであわなかったら…こんなきもちにならなかったのかな…」

「それは言ってはならぬぞ、今剣」

「…」

「Aと出会い、多くの知らぬことを我らは学んだ
多くの喜び、多くの楽しみ…
驚くことも多々あったが、これらは我らにとって大切なもの
Aが居たから気づけたことぞ?」

そんなことを言わなくとも今剣は理解している。
頭の中ではの話だが…

「っ…岩融ぃ…」

吸い込まれるように俺の胸へ身を預けた今剣。
今は十分に泣くといい。
泣き止むまで俺の胸を貸そう。

部屋に響く小さな音は夜が明けるまで鳴り響いた。

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作者名:麻葉音 | 作成日時:2019年1月3日 23時

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