ほくほく短編集。2 (ページ25)

今日:2 hit、昨日:19 hit、合計:193,524 hit

. ページ25

. ※ 大我さいど

2週間ほど前から、北斗の映画の撮影が始まった。
共演者さんたちもいい人らしくて、楽しそうにしてた。

……前までは。

今は、楽屋でも寝てることが増えて。

随分疲れてそう。

.

皆も気付いてるんだけど、台本片手に頑張る北斗を見ると、さすがの俺らも止められなくて。

裏で過保護さが爆発してた。

鞄に薬忍び込ませたりね。笑

でも当の本人は、それに気付く元気もないそうで。
そろそろ皆がどうしようか、頭を抱えてた。

.

今日は舞台の後に来たから、いつもより着いたの早いんだけど……

もう既に北斗が到着してた。

早くに来て、先にダンスの練習してたみたい。

相当踊ったみたいで、前髪は汗でぺったりくっ付いてるし、ちょっとフラついてる。

.

『…北斗？』

「っわ、きょうもと、」

俺が話しかけると、そっぽ向いてバツの悪そうな顔をした。
" 不仲だから " とかじゃなくて、体調悪そう。

『体調。悪いんでしょ』

「な、悪くないし…」

『なんで早く来たの？』

「俺、映画の撮影でただでさえ遅れてるし…

俺のせいでレッスン止まっちゃったら、みんなに迷惑かけちゃう」

『そんなことないよ。だって、彼奴ら、北斗の事大好きじゃん。笑』

.

『たまには誰かに頼っても、いいんじゃない？』

.

俺が声をかけると、下唇を噛み締めてぼそぼそ話し出した。

「……俺、調子に乗ってたかも。」

「前のドラマの時、たくさんの人に褒めてもらった。俺も演技が好きだし。」

相槌を打ちながら、ゆっくり北斗の話に耳を傾ける。

「でも今回は、上手くいかないことが多くて。なんか……疲れちゃった」

そう言って苦笑いする北斗は、目に見えるほど細くなった気がする。

きっと撮影が始まってから、北斗の中で色々格闘したんだろうなあ。自分と。

.

北斗は抱え込んじゃうタイプだから。支える人が必要なんだ。

.