8 ページ8
「嫁が見つかったらしいな。……あと１ヶ月でお前の仕事も終わるやろ。そしたら、嫁さん連れて戻ってき。グルッペン達から聞いとる。お前には勿体無いほどの人やと。精々１ヶ月手放さんよう頑張れよ」
「ああ、分かっとる。最高にええ女手に入れた」
通話を切って、スマホを机の上に置いたトントンは、再度Aを見た。自分の肩に顔を寄せて、可愛い寝顔を見せている。
「……すみません……資料作成は終わっていなくて……」
「ん？」
「……終電逃した……」
「え？」
「クレーム対応押し付けんなよ、クソ上司……」
何かブツブツと呟いているA。よく耳を澄ませると、殆どが会社への愚痴だった。どんな会社に勤めてんねん。とトントンが呆れ顔を浮かべた時、小さな呻き声を上げてAが目を開けた。トントンと目が合って数秒後、甲高い悲鳴が上がった。
「そうだ……この人居たんだった」
「おはようさん。随分と酷い寝言やったな。疲れとるために、ココアでも作ろか？さっきキッチンで見つけてん」
「あ、お願いします」
「OK。可愛ええ嫁さんの頼みは断れへんもんな」
この会話もするだけ無駄だとAは適当にはい、そうですね。と棒読みで返す。見るからに堅気の人間では無い男が、ウキウキでキッチンに立ち、ココアを作っている様子は何とも言えない。
「……暑い」
寝ていて汗をかいている事に気づいたAは、服に手をかけた。すると、トントンが慌てて止める。少し頬を桃色に染めて、言葉をどもらせながら。
「ちょ、A!?着替えんなら部屋で着替えろや。まだその気になるんは早いって!!」
何を考えているかは知らないが、Aは服をパタパタして風を入れたかっただけだ。意外とウブな反応に、Aは思わず笑ってしまった。
「何勘違いしてるんですか？流石に男性の前では脱ぎませんよ……」
「あ、ああ。……なにわろてんねん。悪いか。……ほい、ココア」
少々不満げに口を尖らせて、トントンは冷たいココアをAの前に置く。そして、慣れたようにエアコンをつける。
「ああ、電気代勿体無いからエアコンつけないで下さいよ」
じゃあなんであるんだというツッコミが普通は出るが、トントンは笑顔で手を振る。
「金なら俺が出したるって。夫婦なんやから、もっと頼ってええんやで」
「……付き合ってもないのに？」
「だって夫婦やろ？」
ド真面目な顔をして言うものだから、頭痛がする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1520人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です！！ (3月29日 1時) (
レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます！素敵なお話をありがとうございました！！ (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←ｷｯﾓ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月10日 17時
