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「トントン様は私の夫。トントン様は私の夫。トントン様は私の夫。トントン様は私の夫」
「落ち着きましょう。警察を呼びますよ。貴方は名家の出でしょう?華々しい経歴に、傷をつけていいんですか?」
言葉で制しようとAは頑張るが、こういう女こそ聞く耳を持たない。1歩1歩包丁を持って近づく。目は血走っており、前に見た芍薬のような姿はどこにもなく、ススキに般若の面をつけたようになってしまった。
「何で、私のような素晴らしい人間が、貴方のような落ちぶれた人間に負けるのよ。トントン様は私が好きなの。トントン様の嫁は私なの」
そこで素直に頷いていれば、まだ助かったかもしれない。でも、Aは目付きを変えて言う。
「トントンさんは、私の旦那さんです。トントンさんの妻は私です」
「いやぁぁ!!!」
甲高い悲鳴を上げて、女はAに向かって走った。防ぐ術なし。腹部に何かが刺さる感覚。その後に、焼けるような熱さと痛み。Aに馬乗りになって、女は何度も何度もAを刺す。
「……や゛め、」
流石に、さっきの悲鳴で気付いたのだろう。社員たちがトイレに集まってきた。酷い有様に、皆は口元を押さえて絶句する。女は、すぐに取り押さえられ、Aは緊急搬送されて行った。勿論、その届けはトントンにも届いた。女を殺したい衝動に駆られながらも、まずはAの命が第1。幹部を引連れて、Aが搬送された病院へと向かった。
「A……無事でいてくれ……A」
法定速度なんか無視して、車をかっ飛ばす。それでも、安全運転する理性は残っているらしい。バタバタと病院に乗り込むと、手術室の前に連れて行かれた。
医者は、難しい顔をして、幹部や、トントンに話をする。
「腹部を滅多刺しにされており、臓器もいくつか傷ついています。ハッキリ言いましょう。今、生きるか死ぬかの瀬戸際を彷徨っています。あと、数時間持たなければ、Aさんの生存は厳しいと思われます……」
トントンが膝から崩れ落ちる。皆も、苦しい顔で俯く。ギュッと拳を握ったトントンは、両目から多量の涙を流しながら、医者に掴みかかった。
「何としてもAを助けて下さい……!!必要なら、臓器だっていくらでも提供する!!どんなに高額なものでも、Aが助かるんなら、どんどん使って下さい!だから……だから……どうか……Aを……!!」
ズルズルとトントンは医者から手を離して倒れ込む。
「最善は尽くします」
ポタリと床に涙が落ちた。
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です!! (3月29日 1時) (レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます!素敵なお話をありがとうございました!! (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - 。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ(初心者) - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←キッモ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年10月10日 17時