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「トン氏。血ぃ拭け」
ポイと優しくグルッペンがトントンの顔にハンカチを投げる。それでトントンはようやく、口の端から血が垂れていることに気づいた。
「ありがと、洗って返すわ」
「返さんでええ。安モンやし。……神に祈るトン氏を見るのは初めてだ」
「俺には何にも出来へんから、せめて……神に頼るしか……!!」
「せやな」
青い手術室の扉を睨みつけるトントン。心臓が今までに無いほどうるさい。留まることを知らない涙は、床に段々と水溜まりを作っていく。
「大丈夫。Aやし。絶対、無事で、生きて戻ってくる。………………絶対。Aやもん」
泣きそうな顔で、ロボロが言う。心無いと言われている彼のその姿に、皆は目を丸くする。何となく、ロボロの恋心を知っていた鬱先生だけは、慰める訳も無いが、ロボロの背中を優しく叩いた。
軽く3時間は経った。時が過ぎるほど、皆の不安を煽っていく。
「A」
トントンが眼鏡を外して目を擦る。それからも時は流れ、医者と話してから4時間が経過した、その時だった。手術室の扉が開いた。血で汚れている医者は、凄く言いずらそうな顔でやって来た。その表情に、一気に皆が顔色を悪くする。トントンに至っては、体を掻きむしっている。
「最善は尽くす言うたやんか……!!」
呼吸の荒いトントンは、今にも医者を殺しそうだ。その殺気を感じ取ったのか、医者は慌てて手を振る。
「手術は成功しました!!!Aさんは、しっかりと生きていますし、1週間程度で退院できる程の治療を行いました!!!」
緊張の糸が切れて、皆が床に倒れ込む。しかし、オスマンは腕組をして、両足を交差させながら、先程まで壁に預けていた背を医者に向けて、鼻で笑う。
「さも成功しましたわーい、って感じやけど、さっきのあの暗い顔はなんなん？驚かせたかったっちゅうクソくだらん理由やったら、今すぐここで撃ち殺すで」
「あっ、いえ、その…」
「なんや、はよ言え」
医者は、口ごもっていたが、決意したようの顔を上げて、皆に辛い現実を突きつける。
「非常に言いずらいのですが……Aさんはもう＿＿＿＿」
幹部の皆は、口をポカンと開けて、ただただ呆然としている。しかし、トントンだけは、何故か表情を変えずに、Aの無事を喜んでいた。
「Aを生かしてくれてありがとう。報酬はいくらでも弾もう。ホンマにありがとう」
「ですが……!!」
「Aが助かったんなら、それでええ」
その目には、曇りは無かった。
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です！！ (3月29日 1時) (
レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます！素敵なお話をありがとうございました！！ (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←ｷｯﾓ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月10日 17時
