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「さてと……すまないな」
叔父貴が戻ってきて、軽くなった空気がまた重くなった。急激に手汗が出てくる。どっかりとあぐらをかいた叔父貴は、入ってこい、と声をかける。すると、失礼しますと凛とした声が聞こえて襖が開いた。
「……っ」
入ってきたのは、3名の美女。全員育ちの良さそうな人だ。背も高くて、堂々としている。同じ女として恥ずかしさを覚えたAは、更に緊張で身を固くした。
「トントン。彼女達は、全員有名な家柄の出だ。お前に似合うだろう?一般人よりも、この組の組長の嫁は、こういう完璧な女でないといかん。俺の妻、そしてお前の母も、立派で完璧だっただろう?」
「……それとこれはちゃうやん」
「まぁ、いい。Aさん、彼女達の隣へ座りなさい」
「っ、はい」
軽いいじめだと思う。美しく、凛としていて、堂々としていて。輝いている彼女達の隣に1人ポツンと座るAは、チラチラと彼女達と自分を比べる。
豊満な胸に、艶美な腰つき。くっきりとした鼻。羨ましい。
「ふふふ」
あまりに違いすぎるAに、女たちは笑い声を漏らした。
「トントン。これでもお前は彼女を選ぶか?」
叔父貴は、トントンはもうAを選ばないと確信していた。しかし、グルッペン含めた他幹部らは、無駄な事するなぁ、と微笑ましげに見ていた。ショッピやチーノといった、幹部の中でも若い方の2人は、少し同情するような目でAを見る。
彼女達を花に例えるとしたら、芍薬と牡丹と百合。そして片喰。
片喰もとい、Aは両手を握った。運命を決めるかのように、ししおどしがカーンと乾いた音を響かせる。トントンは、立ち上がって、叔父貴に近づく。遠慮無しに、叔父貴に手を伸ばす。
「……なんだ?」
叔父貴の後ろにある我々組に伝わる刀を手に取ったトントンは、その刀を持って女たちに近づく。デジャブだ。鞘から刀を抜くと、刀身が顕になる。
和室の光を反射して不気味に光る刀を大きく振り上げたトントン。女たちは悲鳴を上げて襖を開けて広間を出て行った。
「……どうしました?トントンさん」
切らないんですか?そう、笑いを交えて聞くと、Aの目の前に刀が刺さる。畳を貫くそれは、よく研がれているのが分かる。
「叔父貴。見たか?この肝の座りよう。組長の妻が、刀如きにビビっててええもんなん?それでも、叔父貴……いや、親父が認めてくれへん言うなら、勘当してくれて構わへん。つか、俺から縁を切る。組なんかどうでもええわ」
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です!! (3月29日 1時) (レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます!素敵なお話をありがとうございました!! (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - 。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。。゚(゚´Д`゚)゚。←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ(初心者) - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←キッモ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年10月10日 17時