15 ページ15
「照れ屋さんやな、Aも」
(ポジティブだなぁ)
苦笑いを浮かべたAは、大人しく席について、トントンの作ってくれたハンバーグを食べる。自信が無いようで、少し眉を下げて心配そうにこちらを見るトントン。もぐもぐと咀嚼し、嚥下する。
「おいひい」
口元についたソースを舐めとって、Aはニコリと笑う。ホッと胸を撫で下ろすトントン。
「良かった。なぁなぁ、A。そろそろ認めてや。俺の事旦那って。お前の為なら何でもする！家事も仕事も俺がやるから！」
「…ねぇ、トントンさん。もっといい人が居ますよ。私みたいな、仕事に取り憑かれたズボラな人間よりも、美しい女性が、貴方を待ってますよ」
「嫌や。そんなん言わんとって!!」
駄々をこねる子供のような口調で、トントンは必死に言う。食べる手をとめない姿に、Aはクスッと笑ってしまう。
「トントンさんの料理って、愛情籠ってる感じしていいですよね」
「当たり前やん。Aの喜ぶ顔見たくて作ってんねんから。嫁の、Aのその可愛ええ笑顔見れただけでも、俺は大満足やで」
「っ、ズルいですよ」
ふにゃっと笑うトントンの顔を見て、Aはため息をつく。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「ん、そこ置いといて」
「ダメです。今日は私が洗いますよ」
「じゃあ、一緒に洗おか」
席を立ったトントンは、食器を下げて、Aと共にキッチンに立った。トントンが洗い物をして、Aが拭いて戻す。
「なんか……こういうの、夫婦っぽくてええなぁ」
しみじみとトントンが言うには。拭いた皿を戸棚に戻していたAは、動揺して手を滑らせた。自分に向かって落ちてくる皿。頭を守ろうと、縮こまる。
しかし、自分に衝撃は来ず、鈍い音の後すぐに皿が割れる音がした。ソっと目を開けると、トントンが腕を伸ばしてAを守っていた。トントンの腕は赤く腫れており、破片がいくつか刺さっている。
「トントンさん!!」
先程まで洗い物をしていたので、手は泡だらけだ。その手で傷口に触ろうとしているトントンを、慌てて止める。
「心配してくれとるん？ありがとうな。でも、こんなん叔父貴に殴られるより、他の組のヤツらに撃たれるのに比べたら全然痛ないで」
「比べるものがおかしいんですよ!!もう、自分では触らず、そのままで居て下さいね。処置しますから」
プクッと顔を膨らまして、トントンに釘を刺す。ヘラヘラとしながらトントンは、おう、分かった。と答えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1520人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カルーア - すっごい情緒たっぷりなお話を！最高過ぎる…ありがとう！ (7時間前) (
レス) @page50 id: a803a79d39 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です！！ (3月29日 1時) (レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます！素敵なお話をありがとうございました！！ (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月10日 17時
