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「あ゛ぁ〜」
大きく伸びをして、会社を退社する。目の前の道路では、車がクラクションを鳴らしていたり、バイクを唸らせるヤンチャな男が居る。現在、11時。日を跨ぐ寸前での退社だ。
クラクラする頭を押さえながら、地下鉄へ向かう。プラットホームの自販機には、売れ残ったジュースとお汁粉だけが点灯していた。ここで買う必要も無かったが、何となく、お汁粉を購入した。今日は金曜。地獄の1週間が終わった。携帯を見る気力も無く、虚ろな目で電車に乗り込み、ガタガタと揺られる。
(今日は終電逃さずに済んだ……)
そのことに喜びを感じながら、家のある駅で降りる。ホームを早歩きで出て、地上へ出る。輝く星とは反対に、彼女、Aの心はどんよりと淀んでいる。今日は、仕事でミスが多く、上司にこっ酷く怒鳴られた。
デスクワークのせいで、ゴリゴリに凝った肩を手で揉み、帰路をとぼとぼと歩く。街頭以外に光源のないこの道を歩くのももう慣れた。うるさい酔っぱらいも、自惚れたナンパ男も、ひねくれた家出少女も。全部だ。
家が見えてくると、自然に足取りも軽くなってくる。Aの住むマンションは、2号棟。402号室。
ようやくだ。早くふかふかのベッドにダイブして、風呂入りながら音楽聞いて、寝る前にYouTube見たい。金曜の唯一の楽しみ。Aは少し口の端を上げて、エレベーターに乗り込んだ。
チン、と目的階に到着したという音が鳴った。エレベーターを降りて、廊下を進んでいると、自分の家が見えてきた。
鞄から鍵を出して、鍵穴に差し込むが、入らない。試しに、扉を引くと簡単に開いた。鍵を閉めずに行ってしまったのか、と驚く間もなく、彼女は死を覚悟する光景を目にする。
血塗れの部屋。倒れている人。落ちている日本刀。明らかに堅気の人間では無い男。
この状況を説明するには十分過ぎた。
「誰やお前」
威嚇するような声は、次は自分を殺すんじゃないかと思い込んでしまう。返り血を浴びたのか、男の衣服は血に汚れている。クルッと振り返ると、あら不思議。自分が居るはずの2号棟があるじゃないですか。
そこでようやくAは理解した。部屋を間違えたことに。
「す、すみません!!!部屋を間違えましたっ!!」
バタンと閉めようとするが、彼の方が早かった。グッと扉を掴んで、Aの手首を強く握る。クッと痛みに顔を顰めるが、お構い無しに引っ張られる。血塗れの部屋に引きずり込まれて、床に放り投げられる。
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ゆず塩(プロフ) - 何回も読み直して部屋が水没するくらい泣きました…最高です！！ (3月29日 1時) (
レス) @page50 id: 8ae73bc925 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品も最高でした!!!!最後のrbrさんとの話がまたよかったです!!大好きです!!←突然の告白 (2022年12月11日 14時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
ねう。(プロフ) - ボロッボロに泣きました。とても素敵なお話でした。今までたくさんのお話を読んできましたが、こんなに感動して心を動かされてドキドキしたものはこれが初めてでした。何度も読み返させてもらいます！素敵なお話をありがとうございました！！ (2022年9月5日 18時) (レス) @page50 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぺに(プロフ) - ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡←感動しました。ひよこさん大好き。 (2022年6月17日 23時) (レス) @page50 id: bcadc0cb73 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - なんちゅう殺傷能力の高いお話を書くんや・・・最高ですありがとうございました。自分的に最後のrbrさんとの会話がウヘヘヘヘ←ｷｯﾓ (2022年5月2日 23時) (レス) @page50 id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月10日 17時
