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「今度はAか……」
「何度通信繋げても繋がらん……」
「逃げたか。拐われたか。トラブルか」
「逃げるわけ無いやん!!!」
コネシマのその言葉は願望に近しいものだった。彼女が自分たちの元から離れるわけが無い。そう信じているから。
「……どうする」
集まった幹部の雰囲気は重かった。グルッペンは我々国に必須だから死にものぐるいで探したが、彼女は幹部でもないただの女だ。
「……彼女の救出に時間を割く訳にはいかない」
グルッペンの言葉に皆は俯く。ここでは彼が絶対だ。しかし、皆は既に彼女の虜となっている。ここで彼女を見捨てるなどできない。それは例外なく、グルッペンも。
「だが、正直言って今の俺らにA無しの生活は考えられへん。あの華を知ってしまったら、もう彼女なしでは生きれない」
「……グルちゃん」
「恩もあるしな。俺らの心を奪った大罪人は、しっかりと連れ戻して灸を据える必要がある。最近調子に乗っているようだしな。G国なら近いし、すぐ終わるさ」
そこからAを探すために、皆は別れた。
一方、G国。地下牢に拘束されているAはグッタリとしていた。泣きすぎて目は真っ赤になっている。
彼女はG国の秘密警察に捕まった。流暢な我々国の言葉を話しているのを聞かれてしまったのだ。G国の幹部の男3人は、彼女の尋問を担当する。彼女のとんでもない容姿に、言葉を失っており、これから拷問するのが忍びないようだ。
「ッ……お家に帰して下さい……」
泣きすぎて枯れた声で懇願する。幹部達は悲痛な表情を浮かべて彼女を見下ろした。
「じゃあ、何故敵国の言葉を話していた?」
「一時期住んでいたんです。でも、今は関わっていないし、喋っていた相手も我々国の元農民です…!!許してください」
Aは更に涙を多くする。完璧な被害者だ。過呼吸を起こせば、更に痛々しく見えるだろう。ここからがスパイとしてのAの本気だ。その容姿をフル活用して、潤んだ瞳を向ける。
「手錠だけでも取ってください……痛いの、」
「大丈夫?」
「こんな子が、スパイなはずが無い!この涙は本物だ」
「……そうだな。息、できるか?」
「っ、ありがとう……ございます」
痛めつけられることなく牢屋を出たAは、すぐに帰り支度を始める。もう情報は得られた。あとは帰るだけだったのに、我々国との中継役と話しているのを見られるとは思っていなかった。
「スパイ失格ね」
帰りの列車で黄昏れる彼女は美しかった。
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名無していう名前の名無し - しゅ、しゅきれぇしゅ‥‥‥。翻訳 やっばばばばば、ワイのドンピシャキチャーーーーーー神すぎる‼︎‼︎好きです‼︎‼︎。 (8月11日 15時) (レス) @page50 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - スッゴい面白かったし最高でしたぁぁぁ!!!まじで神ですね!!!! (2022年12月10日 13時) (レス) @page48 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!かわいい愛のお話だったなあとしみじみ感じております。ありがとうございます。ひよこの子様の作品の主人公ちゃんってみなさんお可愛いですし生き方に尊敬してます。ありがとうございます。体調にもお気をつけください。好きです。 (2022年9月25日 10時) (レス) id: 0350dafbfb (このIDを非表示/違反報告)
みずき - ん“ん”ん“!!!ック…!どう”どい“!!完結おべでどうございまず!!(泣) (2022年9月25日 2時) (レス) @page45 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - むむさん» 教えてくれてありがとうございます、これから気おつけますm(*_ _)m (2022年9月25日 0時) (レス) id: 07b6abd3f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年9月14日 17時