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フラれた。
紛れの無い、俺の好きな人が。
屋上で崩れ落ちながら涙を流す君。背にある夕陽も相まって、不謹慎にも綺麗だと思ってしまった。
この光景を目にしただけで大体は察した。嗚呼、フラれてしまったのだな、と。理解した瞬間なんとも言えぬ、複雑な心境に陥った。
彼女がフラれた事で俺にもチャンスが出来たと言う汚い喜び、彼女の失恋を喜んでしまっている自分への苛立ち。二つが絵具の様にマーブル模様に混ざっていく。
そんな汚い感情を覆い隠す様に、彼女の背中をさする。さすることしか今の自分には出来なかった。
彼女が好きになったのが俺だったら。
そんなもしもを考えたところで、この事実は覆らない。
彼女の視界にいつも入っていたのは、紛れの無い俺の親友だと。
俺が、恋愛相談に乗っている時だって彼女の瞳に映っていたのは親友だった。目の前に居る筈なのに、俺だけ水のように無色透明になった様だった。告白出来るチャンスはいくらでも有ったというのに、何処か俺が言ってはいけないような雰囲気が漂っていた。
そんな距離がむず痒くて、仕方が無かった。
「なあ、」
「俺と、付き合ってみいひん？」
思わず、こう口走った。
『、えッ』
告白してしまったと気づいた時には、目の前には驚きが隠しきれていない彼女。しかし、不思議なことに「やってしまった」という罪悪感は一寸足りとも無かった。
「ずっと、Aの事が好きやった。
今もこれからもずっと好きや。
付きおうてくれへん？」
凄く思い詰めた顔をする彼女。相当悩んでいるのだろう。
数秒程経った。数秒の筈なのに信じられない程長く感じた。彼女はこれまでに無いほど、真剣な眼差しをしていた。日が沈みかけていて、アニメのシーンを切り取った様に綺麗だった。
彼女が出した答えがどうであろうと、俺は。
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作者名：ひよこの子
x他8人 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年8月6日 18時
