21 ページ21
トントン。君の心は一体どこにあるの？
私を見て。私だけを見て。妹さんのことは分かった。でもそんな幻像に縋るトントンは見たくない。
「おやすみ」
「おやすみ、A」
トントンは私を包むように抱き締めて眠った。温かくて、私もすぐに眠ってしまった。
ーーーーーーー
やけに騒がしい。幹部の部屋は基本防音性だから騒がしいはずないのに。なんかいい匂いもする。パチッと目を覚ますと、そこは食堂だった。
「あ、起きた」
「トントン。姫さん起きたで」
「ホンマや。おはようA」
ニッコリと笑っているが、それ以前に聞きたいことがある。何故私はトントンの膝の上に乗せられて皆に見られている？
「なんで……？」
「狙われとるかもしれへんAを部屋に置いて、1人飯食いに来るなんてできへん。しかも、気持ちよさそうに眠っとったから起こすの可哀想で」
「中々可愛い寝顔やったで」
揶揄うような口調でチーノが言うからたまったもんじゃない。つまり私は、パジャマ姿と寝顔を皆に晒されていた訳だ。
「〜!!!」
恥ずかしくなって、今すぐマグマだまりに飛び込みたくなった。真っ赤になった顔を隠す物がなくて、手で覆うと、トントンがその手を外させる。
「可愛ええ顔が見えへんやろ」
「お前ら朝っぱらからイチャつくなや！」
ロボロが言うが、どこか嬉しそうだ。本当、この男心が無いなんて嘘なんじゃないだろうか。ありがとう、ロボロ。
今最高に幸せだよ。
「トントンさん、アーシャも膝の上乗りたいです！」
「後でな」
いや、後でもダメでしょう。
「嫌っ、今がいいの。お願いします〜お兄ちゃん」
「!?」
皆が凍ったように固まる。トントンは瞳孔を開いて、震えている。
「トンミ……」
「アーシャですぅ！前にトントンさんがお兄ちゃんって呼んで欲しいって言ったんじゃないですか！」
「A、すまんけど、退いてくれへん？一生のお願いや」
「……うん、」
トントンの悲痛に歪んだ顔を見たら断れなかった。誰も止められない。トントンはアーシャを膝の上に乗っけると、スっと頭を撫でる。見ていられなかった。
「はぁ」
ため息混じりにトントンを見て食堂を出て行く。ガシャンと音がして、振り返ったらロボロが追いかけてきていた。
「……何」
「死ぬなよ」
低く。絶対に死なせるものかと言う意思がある。私は前科一犯だから、心配するのも当然だ。
「……シッマのとこ行く」
「A。死ぬなよ」
大事な事なので2回言う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1692人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キリス(某教祖様)(プロフ) - え…好き♡ (1月15日 21時) (
レス) @page50 id: 62b7efaae2 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 笑いあり涙あり感動あり。正にこの作品のためにある言葉だなと感じました。優しい時間をありがとうございます、この作品の彼等に出会えて良かったです。あとがきを読んでより一層、素のアーシャが好きになりました。また会えるといいなぁ (11月7日 4時) (レス) @page50 id: dba6e6f19e (このIDを非表示/違反報告)
セエレ(プロフ) - なんだこの神作！？と思ったらまさかの推し作者様という奇跡。話の持ってき方が上手すぎる…文章力が凄すぎて作品引きこまれすぎて今泣きそうです (9月18日 23時) (レス) id: b81e176fb0 (このIDを非表示/違反報告)
しんし - お見事でした！！！アーシャにはぜひ子供になって欲しいです､､今まで見た中で1番読み応えがありました！ (5月13日 2時) (レス) @page50 id: ced92b552c (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - この作品もまじで!最高でした!最初はtnさん嫌い!ってなっててつぎにアーシャなんなん?最後はおめでとー!!!!ってなりました!また一気読みしちゃいましたよーでも最後アーシャ好きになっちゃいました!憎めないですよ! (2022年12月8日 18時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年3月28日 18時
