【d!】大嫌いやねん【2】 (ページ4)

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いつもは生き生きとしているコネシマの目も、今は死んだように濁っている。どこを見つめているのかも分からず、Aの問いかけにも一切答えない。

「植物状態……なら、回復の見込みはあるんですよね!?」

「あのな、Aちゃん。確かにそうやねんけど、シッマは殆ど薬でやられてもうてる。今生きとるのが奇跡なくらいのバランスで保たれてんねん。持って1週間、それが医者としての俺の答えや」

諭すように鬱先生が言う。

コネシマの目は開いているのに、その瞳にAが映ることは無い。意図して行う行動、コネシマには思考することができないのだ。

「ごめんね、お兄ちゃん。スパイだって決めつけて。一方的に責めて。お兄ちゃんは私を守ってくれてたのに、大嫌いって嘘ついて、お兄ちゃんが抱えているもの、知らなくて。喧嘩したまま死んじゃうの、嫌だよ」

鬱先生はそんな兄妹の姿が見ていられなくて、ソっと目を伏せる。

「シッマ、体にもすごい傷を負ってた。憂さ晴らしに殴られたりとか、あったんやろな」

ストンと、Aの気が鎮まる。本当は今すぐ泣き出しそうだった。だけれども、今の話を聞いて怒りの方が勝ってしまった。

空気が揺らぎもしない、静かなる怒り。そのおかげで、Aも自分のすべきことが見つかった。もう既に、C国に軍は向かっている。鬱先生もそろそろ軍医として戦場に向かう。

ならば、Aのすることは。

「鬱先生。私、戻りますね。トントンさんと、グルッペンさんの所へ」

「うん、頑張って」

もう、二度と起きることの無い兄の姿をよく目に焼き付けて、それからAは部屋を出た。無表情のコネシマは、ピクリとも動かずに、瞬きや呼吸という無意識的な行動だけを繰り返していた。

「グルッペンさん、現在の戦況です」

戻る途中に参謀室によって、エーミールからの書類と、ロボロからの戦場の映像を貰ってきた。それをグルッペンに渡したAは、グルッペンの溜まっている書類をついでに持っていく。

「A。コネシマに会ってきたか？」

「はい」

コネシマに会ったのは、Aと鬱先生だけだ。その他は、仕事を全うしていた。仕方ない。

「どうだった？」

「今生きているのが奇跡だそうです。鬱先生曰く、持って1週間。腐らせるか殺すかは私が決めるそうです」

「1週間……か、分かった。じゃあすぐにC国を崩壊させる必要があるな」

グルッペンは、泣きそうなAの頭を、ワシャワシャと撫でた。