無の世界 ページ39
静かだ。人の気配などせず、するのは森の木々たちの話し声のみ。グルッペン達が死んでから随分と経った。一人、また一人と死んで行く彼らを見るのは辛かった。逝く者より送る者の方が辛いのだ。ある者は暗殺され、ある者は病床に臥し、ある者は寿命の限界まで生を全うした。
「たった一人、生き残ったのが私だなんて皮肉なもんだと思わない？」
皆の骨が埋まる墓地で彼らの墓石に問いかける。当然返事はない。あったら恐怖だ。
「皆のこと、本当に怖かった。嫌いだった。それなのに、心のどこかで皆とまた楽しく日常を過ごせることを期待している自分も居た。楽しかったよ、今世は。皆の愛の重さが心地よくて、前世で味わった苦痛を忘れるほど幸せだった」
今の私は、軍からは身を引いている。世代交代だ。国は次の世代に継がれる。現総統も優秀だ。心配することは無い。誰も私を探さない。探してくれる人は皆逝ってしまった。だから死ぬならば、皆と一緒がいい。
前世は死に場所を選べず、問答無用で磔だったが、今世は皆に囲まれて死ねるんだ。最高じゃない？
「あんだけ待ち遠しかった死も、今世は死にたくないとさえ思った。歳をとったねぇ、皆」
ああ、ダメだ。目の前が霞む。全身に力が入らなくなってきた。なんとか歩いて、グルッペンの墓石に寄りかかってズルズルと座り込む。
「ゲホッ、結局最後まで、君達全員の愛情を理解してあげることも、君達を心から信用することも出来なかった。許してね」
息がしづらい。思考がぼんやりとしてきた。
「皆はきっと私に謝りたいことだらけだと思うし、大きな罪悪感を抱えて死んだ奴も居ると思う、けど。……私は憎んでないし、許してるし、感謝してる」
限界だぁ。
「ありがとう」
この一言に尽きる。人ってこんなに楽に死ねるんだ。痛みを感じながら、世界を、友人を恨み呪いながら死ななくていいことがこんなにも幸せだなんて、知らなかった。
皆との幸せで楽しくて、愉快な思い出が脳内を駆け巡る。魂だけが浄化されていくような自然に還るような涼しいような暖かいような不思議な感覚。
何故だろう、皆が近くに居る気がする。何も見えないし、何も感じない。だけど何となく分かる。誰かが私を包み込んで泣いている。誰かがようやく来たか、と笑っている。誰かが早いよ、と怒っている。
私の主が言っている。
「行くぞ」
神様、我儘を言わせてください。
もしも来世があるなら、また彼らと一緒に居させてください。
fin
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みりんみそ - 性 癖が、、ワイのド性 癖、、、！！？？ (12月28日 3時) (
レス) @page35 id: 689708648d (このIDを非表示/違反報告)
白米の無い弁当 - やっべ何回でも見返せる(5回目くらい) (12月24日 0時) (レス) @page41 id: b86b104ca2 (このIDを非表示/違反報告)
あ - あ (11月16日 16時) (レス) id: 5439c0f871 (このIDを非表示/違反報告)
みるく亭 - アッアッアッアッ（過呼吸） 好き…！！ (11月9日 13時) (レス) @page35 id: 78d03dd0b2 (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - さいっこうでした…！！！あまりこういうのは好きじゃなかったけど、最後もハッピーエンドで終わって、めっちゃ良かったです！！！応援してます！ (2023年1月14日 9時) (レス) @page35 id: bb7bb5003e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年10月26日 19時
