【d!】無感情ナース2 (ページ47)

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ある日。休みを取ったAは、中庭の花の手入れをしていた。Aが植えた訳では無い。ただ、いつも手入れしている兵士が戦死してしまったので、水をやる人が居なくなってしまったのだ。

自室から見る中庭の景色が好きなAは、こうして時々手入れをしている。暖かい日差しの元、作業するのはどうも眠くなる。

色とりどりのは花々が、美しく咲くのは、見ていて気持ちが良い。たまに、軍内で起こる内ゲバに巻き込まれて爆破されそうになっている花。

しかし、流石我々国で育った花というか……近くで爆発が起きようが、爆風に耐えて凛々しく立っている。

水やりを終え、立ち上がったAは、ある人物を見つける。ロボロだった。大きな機械を抱えて歩いている。

特に用事も無いので、話しかけずに見なかった事にしようとすると、ロボロが怒る声がした。

「声くらいかけろや!!」

「すみません、用事なんかなかったので」

配慮の無いAの言葉に、ロボロはうっ、と言葉を詰まらせる。その時だった。生暖かい、春風が吹いた。いつもなら多少の風じゃ飛ばない雑面が、綺麗に飛ばされて行った。

「っ!!」

「あっ！」

2人にとって、大事な物である雑面を、必死に追いかける。雑面は、フワリと木の枝にかかった。

2人の身長はほぼ同じだ。ジャンプしてどうにかなる高さじゃない。

「俺、登ってくるわ」

「はい、気をつけて」

ナースとしては危ないから止めるべきだろう。しかし、兄の形見。止めるなんて出来なかった。ひょいひょいと身軽に木を登って、ロボロは雑面を手にした。

ピョンと地面に降りると、大事そうに表面を撫でてから、再度顔につける。キュッとしっかり結び、Aの方を振り返ったロボロは、必死になってくれてありがとうな、と笑った。

ギュウっと拳を握ったAは、ロボロを真っ直ぐ見た。

「ロボロさん。あなたの親友の名前って、ミセバヤじゃないですか」

「ああ!!なんで知ってんの？」

やはり、覚えてないか、と耳の裏を掻いたAは、スっと息を吸った。

「私の兄は、昔、我々国で起きた爆発事件に巻き込まれて死にました。惨い拷問を受けた後だったそうです。私の兄の趣味は、お面作りでした。兄は一番仲が良かった親友に、作ったから、と雑面を押し付けていました。私の兄の、名前は……ミセバヤって言うんです」

靄がかった記憶が晴れたようだ。ロボロは、震える声で……Aちゃんやん、と声を漏らす。

「思い出してくれて、良かったです」