【d!】無感情ナース2 (ページ32)

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「……ふふっ、ゾムさんは心優しいんですね」

「……そんな事無い」

そんな話をしていると、大広間の扉が開いた。グルッペンに連れられ、入ってきた男の風貌は、赤いバツ印が描かれたマスクをつけ、腰に刀をさす白い軍服の男だ。

「げどちゃん!!」

「ひとらん!!」

ああ、この人が。チラッとAとひとらんの目が合う。数秒見つめあったあとるく軽会釈する。

「皆、久しぶり。元気にしてた？」

「おう!!らんらんもようやく仕事から解放されたか」

「いや、ちょっと抜け出してきた。明日朝までには帰れるよう頑張るよ」

どっこらしょ、とオスマンの隣に腰を下ろしたひとらんは、机の上にドンと酒を置いた。

「ニホン酒。もし良かったら」

「ありがとう。さあ、久しぶりに会ったんだ、楽しもうじゃないか」

乾杯の挨拶など無しに始まった宴。Aは、何故皆がゾムの隣を空けていたか分かった。目を離した隙に盛られていくご飯達。到底食べられる量では無い。

「……新しい幹部さん？あの子」

ひとらんがグルッペンに聞く。グルッペンがAの方を見ると、大変な有り様になっていた。ゾムに肉をつ詰め込まれているAは、苦しそうに手を振り回している。

「ああ、我が国の優秀なナースだ。大先生の代わりも務まるし、戦場やと1人で全員の手伝いしとるからな」

「ふーん、可愛いね」

そう呟いたのが聞こえていたのだろう。鬱先生が目を吊り上げて吠える。

「Aちゃんは、俺のナースやぞ!!けどちゃんにはやらんわ！」

「別に、鬱先生専属ナースという訳じゃないですけどね。医務室の担当者と副担当者なだけでしょう」

「あっ、Aちゃん、傷ついたよ!?癒して……」

「はっ、」

鼻で笑ったAは、ゾムから逃げるように、オスマンの隣に来た。

「こんばんは」

ビクッとして顔を上げると、オスマンの隣に居るひとらんがこちらを覗き込んでいた。慌てて姿勢を正して挨拶をする。

「こんばんは。私、Aと申します」

「ひとらんらんです。あんなのが上司だと大変でしょ」

同情するようにひとらんが笑う。

「でも、尊敬できる人です」

「!!」

「そうなんだ」

鬱先生が嬉しそうに振り返ってきた気がしたが、見ていないフリをしてひとらんの方を見つめる。

「Aさん綺麗だね」

「っふふ、ありがとうございます。ひとらんさんも男性らしい、素敵なお顔立ちですよ」

「グルッペン。この子マジでいい子だね。連れて帰っていい？」

「は!?」