【d!】無感情ナース2 (ページ30)

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「あった!!けど大きい」

この軍の幹部は化け物揃いだが、Aは通常の人間と何ら変わりない体の作りをしている。自分の身長くらいあるサイズのストーブを自室まで運ぶなど無理な話だ。

それどころか、エレベーターまで持っていけるかも怪しい。試しに、持ち上げようと両端を持つが、その瞬間に悟った。

(無理だわ)

誰か呼ぶか……とストーブを下ろして、電気を消した時、背筋が凍るような低い声と共に、首筋にナイフが当てられた。

「誰や。こんなとこで何してんねん」

声の主は、コネシマだと分かった。

「私ですよ、コネシマさん」

そう言って電気をつけると、コネシマは驚いた顔をして謝罪した。

「すまん。首傷ついてへん？」

「大丈夫です。それより丁度良かった。私の部屋にストーブ持っていくの手伝ってくれません？」

「ええけど、なんで？」

「寒くて」

半袖短パンのコネシマには分からないだろうな、と小馬鹿にしたような思いを抱きながら言うと、コネシマは屈託の無い笑顔で、ええで!!とうるさく言った。

ひょいと軽々しくストーブを持ち上げると、Aの部屋やろ？とエレベーターを使わずわざわざ階段で行った。

「流石ですね」

「一応、隊長やからな」

腕に浮かぶ鍛えられた筋肉が、彼の努力を表している。

「部屋入るで」

「どうぞ」

「よいしょ」

ここにお願いします、と言われた場所にストーブを置いたコネシマは、クルッとAの方を振り返る。

「じゃあな」

「ええ、お忙しい中ありがとうございました」

コネシマが出ていったのを確認して、Aはボスっとベッドに倒れ込んだ。

「着替えなきゃ」

客人が来るのに、普通の私服じゃ失礼だ。ドレスを着るほどでは無くとも、いつもより整った私服で出よう。と、部屋に鍵をかけて着替えを始めた。

しかし、Aは窓の鍵はかけていなかった。時々居るのだ、Aの部屋に、窓から入ってくる輩が。

「A～!!」

窓から部屋に入ってきたゾムに、Aは急いで布団で体を隠した。

見られるのが恥ずかしい訳じゃないが、見られたくないものがあるのだ。

「……A……それ」

ゾムの言葉にキュッと布団を握ったAは、出てってください、と泣きそうな声で言った。

「……着替え中入ってもうてすまん。大丈夫、俺、なんも見てへんから」

絶対に見たはずだ。でも、Aの気持ちを汲み取って、そう答えるゾム。

「ありがとう……ございます、ゾムさん」