【d!】無感情ナース2 (ページ28)

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翌日、非戦闘員の皆は見事に風邪を引いた。例外無くAもだ。Aは、総統室に暖炉があると聞いて、のそのそと布団から出て行った。

重厚な扉をノックして開けると、書類仕事をしていたグルッペンが顔を上げる。Aを見るなり立ち上がり、ソファへ案内する。

「何か飲むか？」

「ココアとかってありますか」

「多分あったはず…うん、あるわ」

ココアを作り終え、自分の分とAの分をテーブルに置いたグルッペンは、Aの正面に座った。ついでにお菓子を持ってきたのは、トントンには秘密らしい。

「大先生はどうだ？」

「薬を飲んで寝込んでます。後で、様子を見に行こうかと思っているので、ご安心ください。」

「医務室の2人が風邪を引くとはな」

「総統閣下も、体辛いでしょうに、よく書類できますね」

すると、グルッペンはどこか遠い目をして項垂れた。

「トン氏からの催促の電話が毎晩鳴るんだ。……期限1週間過ぎただけだぞ」

「1週間は遅れすぎでは？トントンさんも会計があるので急いでいるのでしょう」

コトっとココアのカップを置くA。
「そういえば、今度S国に宣戦布告したいと思う。鬱先生と交代で行ってきてくれないか？4日置きでいい」

「分かりました。……我々国も深刻な人手不足だと気づいて下さいね」

ポカンと口を開けたグルッペンは、申し訳なさそうな声で言う。

「足りてないのは、救護班だけだ。それ以外は十分すぎるほど足りている。どうも、我が国の軍の救護班をやりたいという者は、幹部目当てでな」

「せめて、医者は雇いましょうよ」

「戦場に行くのが怖いんだと。A程肝っ玉が座っている女も少なくてな。……今はこれで我慢してくれ」

「はい」

表情を変えずに言ったAは、菓子に手を伸ばす。グルッペンが食べていいと許可を出すと、クッキーを手に取った。

「手作りですか？」

「まさか。貰いもんだ」

クイッとメガネを上げたグルッペン。その時、電話が鳴った。

「またトン氏か」

うんざりした顔で立ち上がったグルッペンは、受話器を取った。

「書類なら進んでるぞ……って、久しぶりだな。どうした？……本当か!?幹部たちも喜ぶだろうよ。特に、オスマンとかがな。宴の準備をして待っている。ああ、じゃあな」

ピッと切ったグルッペンは、嬉しそうな顔で、軍全体に放送をかけた。

「幹部は直ちに総統室に集まるように」

そう言うと、Aの方を見てニヤリと笑いながら言う。

「東洋の国から来客だ」