【d!】無感情ナース2 (ページ13)

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私も疲れてます、という言葉を飲み込んで、Aはグルッペンをベッドに寝かせた。

「首周りを念入りに頼む」

「分かりました。珍しいですね、貴方が私に頼み事なんて」

「首が痛くてしゃあないねん。大先生にやってもらうよりは、安心感がある」

「ふふっ、一応彼も12医の1人なんですけどね」

「そうは見えないよな」

実力は、並じゃないはずなのに、そう見せさせないのはある意味才能ですね、とAが笑うと、グルッペンは貫禄が無いだけやろ、とどこか呆れたように言った。

「あぁ、気持ちええんじゃ～」

「そう言っていただけて嬉しいです」

「A～なんかおもろい話無いん？」

「えぇ？」

グルッペンの首周りを解しながら、Aは話の話題を探した。鬱先生とよくするのは、病気や治療法などについてだが、それをグルッペンにしたところで面白いのかと必死に頭を回す。

「では、致死率100％の病気でも」

「必死に探した話題がそれか。まぁ、お前らしいな」

「狂犬病はご存知ですね？」

ああ、とグルッペンが答える。

「じゃあ面白くないですね。うーん」

「他に、珍しい病気とか無いのか？ファンタジーに出てきそうな」

「ファンタジー…総統閣下がその言葉を口にすると面白いですね」

「そうか？」

ファンタジーに出てきそうな病気を脳内から引っ張り出してきたAは、あっ、と声を漏らした。

「罹ると、人肉を欲するようになる病気とか……ですかね」

「お前、ファンタジーって言葉知ってるか？」

「おや、刺さりませんでしたか」

ググッと腰を解す手に力を入れると、グルッペンから力の抜けた声が出る。世の中の女子が聞いたら、顔を真っ赤にして倒れるくらいの色気ある声だったが、Aはそういう感情さえも薄いらしい。

「あっ、そういえば、皮膚の色が、白銀に変わるという病気があるそうです。私はその患者さんを見たことないんですけど。もしかしたら鬱先生が診たことあるかもしれないですね」

「皮膚が白銀か…確かにファンタジーっぽさはあるな」

「これも刺さりません？じゃあ……絶対に殺さなくてはいけない病気、とかどうでしょう」

「面白そうじゃないか」

ようやく食いついたグルッペン。マッサージする手が痛くなってきたが、折角なので休まず話を続ける。

「これも聞いただけなんですけど、この病気に罹ると、脳が支配されてしまうようです。そして、支配されると、人を殺し始めます。それ以外のことが出来なくなる、そんな病気です」