【d!】無感情ナース2 (ページ11)

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「知らんな。あのな、俺……実は記憶飛んでんねん。親友を亡くして、そのショックで記憶の所々が飛んでもうて……もしかしたら、会っとるのかもしれんけど、俺の記憶には、居らん」

ロボロの答えを聞いて、Aはそうですか、と特に気にしていない様子で言った。ロボロは安心したように息をついた。

「お前が感情薄い奴で良かったわ。これで泣かれたりでもしたら、俺どうにもできんで」

「……ええ」

「仕事の邪魔して悪かったな。じゃあ、俺も戻るわ」

「はい。では」

ロボロが去った医務室は、どこか静けさを感じた。

「記憶が無い……か」

自嘲するように鼻で笑い、Aは再びパソコンに向かった。

医務室には、タイピング音と時々Aの欠伸とコーヒーを飲む音しかしていない。

「……終わった」

ドサッとAが机に倒れ込む。もう何日経ったか分からない。朝食夕食は、幹部たちが持ってきてくれたので、なんとか生き長らえているが、全身の痛みが尋常じゃない。とりあえず1週間有給を取ろう。そう決めたAだが、体が動かない。

「印刷は……鬱先生にやらせよう」

落ちる瞼に抵抗ができず、Aは医務室で眠ってしまった。

「……終わったんや」

Aが寝てから数時間後、鬱先生が医務室に出勤してきた。全ての診断結果をまとめ終わったようで、鬱先生はお疲れ様、と寝ているAを労った。

「……ん」

午後6時。Aは起床した。

「え」

医務室で寝ていたはずだが、いつの間にか自室に居た。医務室から自室まではそこそこ距離があるので、鬱先生が運んだとは考えにくい。

「……じゃあ、誰が……」

「俺やで」

突然した声に驚いて振り返ると、Aの部屋のソファでシャオロンが漫画を読んでいた。

「シャオロンさん。お久しぶりですね」

「そうでも無いで。そういやさっき大先生がな、Aちゃん寝てもうたから、部屋まで運んだって、シャオちゃん!!って泣きついて来よったから運んどいたで」

「ありがとうございます。俵担ぎにされて運ばれている姿が目に浮かびますよ」

「失礼な奴やな。ちゃんと横抱きで運んだわ」

「おや、意外ですね。……ふふふっ、ありがとうございます」

口元を隠して、嬉しそうに笑ったAを見て、シャオロンは被っているニット帽を深く被った。

「ちゃんと嬉しそうな顔できるやん」

「失礼な人ですね。私だって人間ですから。人より感情が薄いだけです」

「……そうでも無いで」