[wrwrd]白に包まる７ (ページ7)

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ヴィルに付いて行き階段を上ると、扉があった。
その上は、居住スペースにして居るらしい。

ヴィルに続いて、ひとらんらんも中に入る。
冷えた廊下を数歩進めば、又木戸があり、キィ、と鳴らしながら開ければ、カントリー調のリビングが拡がっていた。

随分古いであろうソファには、Aが、二人分の足音を聞いてか、二人の来たタイミングで立ち上がって、「お疲れ様」と微笑んだ。

実際殆ど何もしておらず、強いて言えば気疲れだろうかと言う位のひとらんらんは、微妙な相槌を打った。

下で行われていた会話など露知らぬAのいつも通りの表情に、罪悪感に似た物を感じないでは無かった。

そういう二人を置いて、ヴィルは、「【直ぐに出るのか？】」と、訊いた。

Aはキッチンの方にゆったりと歩くヴィルに、

「【あんまり長居しても邪魔だしね】」

と、苦笑い。

一朝一夕で言語の解る様になる筈も無いひとらんらんには、相変わらず、彼等の表情などからしか、会話の断片を察する事はできない。

ヴィルの方はピクリとも表情筋を動かさないし、Aも何となく表情を変えるものの、常の穏やかな表情を基本的に変えない為、それも余り意味のない事ではあるのだが。

「【色々お話はしたかったけど】」

と、Aは静かに微笑を浮かべる。
何を話したいと言うでもなく、名残惜しさを鬱陶しい程感じさせるでも無い、軽く淑やかな笑みだった。

「【その話は、彼奴の為に取っておいてやれ】」

と、ヴィルはAの方をちらりと見遣りながら言った。

「【未だ行ってないんだろう？】」

Aは少し驚いた顔をしてから、「【良く解ったね】」と、ふわりと頷いた。
ヴィルは黙って、キッチンの戸棚を漁っていた。

「【嗚呼、あった】」

ヴィルはそう呟いて、A達の居るリビングの方へゆったりと戻って来た。
リビングとキッチンの一緒になった部屋では、会話に苦労する事もない。

「あっ」

Aは、戻って来たヴィルの差し出した、透明のケースに入れられたそれを視認するや否や、感嘆符。

「【飴！】」

棒の先に丸く、薄黄の半透明の球体。
飴である。

「【懐かし……！檸檬だ！】」

Aは子供の様に華やいだ声で燥いだ。
ヴィルはそんなAをやや呆れ様にも、慈悲に似た感情を持った目でも見遣って、

「【暇が過ぎたんでな】」

と、言う。
自作である。

「【嫁ほど美味くは無いだろうが】」

「【前から美味しかったし】」