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ずっと、如何し様も無い距離を、如何言う訳だか縮めたがって、傍に居たがった理由。
どうかしていたのは自分で、その名称だって知って居た筈だ。
腕にかかる、下された髪が柔らかい。
不貞腐れているのに放せと言わないAの感覚が、憎たらしい以上に愛おしい。
悩む彼の指先は、凍える程に冷たい。
弱々しい意志を伝えれば、ピクリと痙攣するように震える。
慈しみに似た感情だ。
激烈な物では無い。
只それでも＿＿
＿＿早く、言ってしまえ。
莫迦言うなよ、そんな事言われたって。
ひとらんらんの頭の中で、二つの意見が熾烈な火花を散らしている。
急に黙ったひとらんらんを、Aは首を捻り上げるような格好で見上げた。
(人の気も知らねェで)
無垢な視線が絡まる。
衝動的に、ばつの悪さに似た感覚を覚えて、眼を逸らしたくなる。
何でもない、と今、呆れた様に腕を解けば、Aは部屋のベッドで、何も知らず眠りにつくに違いない。
呆れ返る程、
そしてひとらんらんは、「お休み」以上の返す言葉を持たず、只、眠る。
(もしも)
と、ひとらんらんは思う。
言い訳をするなら。
それが＿＿
何となく、癪に障った。
＿＿＿何て。
上向いたAの顎に指を素早く滑らせて、片手で腰を抱き寄せて固定する。
Aが少し目を見開く。
それ以上の反応を見せる前に＿＿
.
口の端に、唇を落した。
.
瞬く間に済まされてしまうような、幻と済ませてしまえそうな程の、ほんの一刹那の動作だった。
その一種永遠の様な刹那を、なかった事になどできないけれど。
素早い感触は柔らかく、気の迷いのような速度だった。
実際、迷って居たのかも知れない。
「……誰が誰好きかなんて、解らねェだろ」
捻くれた、遠回しな言葉。
きっと、気付いてくれ、と願っている。
唯その一方で、
(気付かなくていい)
と、ひとらんらんは考えて居る。
ほんの少しの気の迷い、空気感の意趣返し。
瞬けば忘れる程、小指の先程で良い、自分の事で少しは困ってくれるなら。
寄せた想いで困らせたくなどないのに。
莫迦の様に矛盾した思いを自覚しない訳がない。
いっそ笑ってくれと思うし、秘中にしておけば良かったと思うし、反対に、絡んだ髪を梳く様に受け入れてくれやしないかとも願っている。
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2020年1月29日 1時
