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＊＊
＿＿こんな事、いつもしてたら、いつか死んじゃうよ、クロ。
舌っ足らずに話しかける声に、青年は薄く笑んだ。
「遊び心を忘れないって言うのは、良い大人の条件の一つだぜ」
会話を受け継がない言葉。余裕気な声に紡がれる。
小さな頭を撫で回し、青年は更に続ける。
「今は、死なない。彼奴らも、お前も居るからな」
＿＿『今は』。
幼心にもそれは、泰然自若とした覚悟のような物と、一定の不安定な波のような危険を孕んで、妙なバランスを取っていると言う事に、言語化できず、はっきりとして居なくとも、気付いた。
理性の付く前の子供の方が、殊更様々な『感覚』に鋭敏だ。
その為に、言葉の裏のそれにそれと知らずも触れてしまって、何だか奇妙な不安感の中に苛まれる。
青年はそれを見てとって、矢張り薄笑みを浮かべる。
「莫迦に変な顔しやがって」
青年は、不安気な面持ちのまま、言葉を発しようとしないその少女の小さな手を取って、「なあA」と、空を見上げ、雲の流れを見ながら、言う。
「『絶対』なんてない。俺も、お前も、そうだ。だから、一生、生きて往けよ」
＿＿解んないよ。
「はは、お子様だな」
何処か不貞腐れた声の少女に、青年は笑った。
増々それに、少女は頬を一瞬膨らませ、ふっと目を伏せた。
「解らなくて良いさ、解らん人生の方がマシなのかもしれない。……だが、何れどうせ、解っちまうことだ。……その先も、
何かを、伝えようとしている。
だがそれを理解するには、少女は余りに幼すぎた。
「お子様には難しいか」
一つ笑って青年は、又、くしゃ、と少女の頭を撫でた。
少し頬を膨らませたが、されるがままにされて居る。
地平線の辺りから吹き抜ける風が、少女の頬の辺りを撫でて行く。
時間感覚の狂いそうな、ふわりとした時節の欠片。
.
＊＊
朝日の差し昇るか、昇らないかと言う処だった。
夢の微睡の中から、Aは数度瞬きをして、聞き分けの好い体を起こした。
(……嗚呼、そうだ)
書き物机に歩み寄り、首にかけている鍵を使って、小箱を取り出す。
カーテンを開ける前の、日課になっている。
袖を捲る。
白い腕に、幾本もの血管が蒼く透いて居る。
Aはもう随分慣れた手つきで、注射針を白い肌の下に滑らせる。
少しは走る筈の痛みにも、Aは少しも顔を歪めず、注射器内の薬が自らの身体に押し込まれる様を、無感動に見つめながら、終わらせる。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
