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「手、伸ばせ！！」
Aは、人影に叫ぶ。いつもの穏やかなのではなく、はっきりと、そう。
Aの声に応じてか、手が伸びる。か細い手が。
Aよりも随分小さな体躯の人影よりは、如何考えてもAの方が追い付くのが速い。
Aはその手首をぱしっ、と掴む。力強く、離すまいと。
その身体を力強く自らの方に引き寄せ、Aは空中で身を捩る。自分が下になる様に。
そしてそのまま、片方の手を口元に持って行き、指を銜えた。
ピィィィッ！
Aは冷静に指笛を吹いた。春の空を高い音が裂く。
＿＿すると、上を浮遊して居た筈の『イーグル』は、丁度猛禽類がそうする様に、急降下を始めた。操縦士は今、『イーグル』の真下に居ると言うのに。
A達の自由落下とは比べ物にならぬ程のスピードで急降下した『イーグル』は、あと一秒で地面に叩き付けられようかと言うその刹那に、A達の身体を攫った。
その速度の儘に、『イーグル』は地にギャッ、と金切り声に似たようなエンジンの音と共に落ちる様に停止した。
その座席には、Aと、抱えられた小さな体躯。
「……危なかったね。死にたかったんなら申し訳ない事をしたけど、＿＿無事かな？」
Aは小さなその人影の顔を覗き込みながら、先程の奇跡的な救出劇など当たり前の事であったかのように何でもなさげにして、いつも通りの穏やかな口調で、そう訊いた。
「え、あ、あ……」
「……何処か痛む？」
「い、え……え、今、……」
口をぱくぱくとさせるその子の声は困惑に満ちて、妙に高い。正常な反応であった。
「なら良かった」とAは涼しげだ。Aにとって、こんな事は手慣れた事である。
「……生、きてる……、僕、……」
震え声。現実感のなく呆然とした声に、Aは
「嗚呼、生きてる」
と、優しい声だ。
「……あり、がとう。有難う、ございます、……」
ほろほろ、涙を零した。
Aはそっと抱き寄せて遣って、頭を撫でる。
「怖かったね、よく耐えた」
Aの穏やかに優しい声は、春風の様に柔らかかった。痩せた身体が泣き声に震えるので、Aは小さな頭をずっと撫でてやっていた。
.
「A元帥！」
「あ、御免パークス、置いてって」
歔欷する子供を抱き寄せた儘、パークスに謝る。
「いえ、見えていましたから。……よくお気づきになられましたね」
パークスに、Aは何となさ気に言う。「何となくさ」
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
