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子供をあやす様に撫で、漸くすすり泣くのが止まった辺りで、Aは子供の顔を漸くちゃんと見た。
成程。紅顔の美少年、と言わんばかりのその顔貌は、羨望を一手に集めるに違いない。Aは何と無く、その事情を察した。
人間、美しいものを賛美するか、気嫌うかと言うのは、先ず二極化の傾向にあるのである。
「……如何し様、送っても良いけど見回りあるからな―……」
少年が頭を撫でられて泣き腫らした目をやや細めるのを見ながら、Aはンン、と小さく唸った。首を捻り、さて、如何したものか、と考える。
「……ちょっと一人で返すのも拙いし。ねェ、御家の方は安心できるの？」
「、うん、……」
「そうか」
自分で首を突っ込んだことだ、パークスに送らせるのも筋が違うだろう。Aはそう考えて、子供の此の後の安全の事を考えれば、自分が送るのが正しいのだろう、と思った。
「パークス、送って来る。見回りを続けておいてくれるかな。後で追いつくから、……何かあれば連絡を」
「承知しました」
パークスが頷いたのを見てから、少年の頭をもう一度撫でて、「家まで送ってくけど、それで良い？」と尋ねる。律義な人間であった。
少年が頷いたのを確認して、Aは少年の両脇に手を入れ、持ち上げた。痩せた身体は、一応軍人として鍛えたAの腕では、女と言えど簡単に持ち上がってしまう。
座席に乗せて遣り、自分も跨り直す。Aは子供が少しの落ちる危険性も無い様に、子供を前にして、座った。
エンジンを掛ける。噴かす音がする。
「よっし、少年。家が何処か、教えてくれる？」
「は、はい……！」
Aは軽く微笑んで、「好い返事だ」と少年の頭を撫でてやった。
.
淡い春の風が吹いている。
その中を突っ切りながら、空中経験を酷い恐怖感と共にしてしまった少年を考慮して、Aは出来得る限り穏やかに、『イーグル』を運転していた。
「大変だったね。次扶けられる保証は無いんだ、出来るだけ自分で自分を守るんだよ」
優しい声で話しかける。幼い子供には、酷い無言と言うのも辛いだろう、と思っての事であった。
如何言った返事を期待したと言う訳でも無かったが、Aは次の言葉に目を瞬いた。
「……僕、そんなに可笑しいですか？」
少年は大真面目であった。大真面目だったし、本気で、その答を探しているらしかった。Aはそれに何と無く感づいて、黙って先を促した。
乗りかかった船である。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
