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その沈黙は、図星だから黙っているともとれたし、解らないから黙っているとも、Aからは取れた。ひとらんらんの真意の方は、単純に解らないだけだとしても。
しかし軈て、
「……行く」
と、一言。
「私、馬駆けした事ないけど、良い？」
「問題ないよ」
良かった。と、穏やかに頬を緩ませるAは、随分落ち着きを取り戻しているらしかった。ほっとした表情を見せるAに、
(あー良かった……)
と、ひとらんらんは人知れず息を吐く。どれ位ほっとして居るかと言う指数があれば、恐らくひとらんらんの方が倍以上だろう。
「じゃあ」と、ひとらんらんは用は済んだ、と退出しようとすると、その白い背に、「ねえ」と声が追い駆けて来た。
ひとらんらんが足を止めて振り返ると、泣き黒子の刻まれた眼尻を少し下げ、緩やかに哂う、いつものAの姿があった。
「有難う」
ひとらんらんの黒々とした瞳の中に、その笑顔は明鏡のように映った。
いつも通りの筈だと言うのに、何故なのかひとらんらんの胸に響いた。
声の先々まで、透き通る様に穏やかだった。
「……別に、序みたいなものだから」
ひとらんらんは、ふいと顔を背ける様にしながら、偏屈で覆い隠すように言った。
自分でひとらんらんは、
(うわ、……)
と、自分の発言に軽く引いた。
普通に「如何致しまして」と返すとか、幾らでもやり方はあっただろうに。
率直に感謝を伝えたAに比べて、その言葉の何と捻くれた事か。
ひとらんらんが今そう思った処でどうしようもない事だ。言葉は取り消せない。
抑も上書きする事で言葉を取り消す事が出来ようが、ひとらんらんの性格上それが出来るとは、ひとらんらん自身到底思われない。
今度こそ去っていくひとらんらんの背を、Aは微笑んだまま見つめていた。
言葉通りの感謝を少しばかり、普段通りに漸くと戻ったその眼に垂らしていた。
.
.
「あ、……」
中庭の方にでも行こうかと考えて居ると、そのひとらんらんの行く前方に、人があった。
外見も若いが、声はもう『若い』と言うより『幼い』の領域。
そしてひとらんらんはその声を、ついさっき聞いたばかりだ。
向うの方も、流石に最高幹部の顔は知っているのだろう。ひとらんらんと眼が合ってしまったのに黙殺する程の胆を一整備士が持合せてはいない。良く知らぬ敬礼よりは会釈を選んだようだった。
(『マグ』、だっけ)
と、先程の会話を思い出す。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
