ひとめぼれ

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音楽が共通の趣味って分かって、
そっからはかなり盛り上がった。


気配消してるとはいえ、
桐山さん、おるし、

あからさまには口説かれへん。


帰りの車に賭けよ、


思うてたら、


その桐山さんが、


「ちょっと、お邪魔してごめんな？
しげ、脚本出来たんか？」


声かけてきてくれはった。


「あ！はい！
実は今、持ってます！」


「ほんま？
俺、今、上がったから、
ちょっと添削したろか？」


神様みたいなこと、言うてくれはってん。


今度、淳太がな、
俺の脚本、顔馴染みのプロデューサーんとこ、
持ってってくれるらしいねんけどさ。

その前にプロのアドバイスが欲しかってん。


「重岡さん、脚本書くんですか？」


神山くんが、
こんなに俺に興味持って話しかけてくれんの、初めてや。



「夢やねん。舞台の脚本家。
恥ずかしいから内緒やで？」


「どんな内容なんですか？」


あれ、えらい、食いつき良くない？


「普段はクレープ屋の探偵の話」


「なんすか、そのおもろい設定は」


「おもろい？」


「うん、俺は好き」


あ、敬語、抜けたよな？今。


自然やった。


「ほんま？嬉しいなあ。
実はさ、最初はたこ焼き屋設定やってんけど、
神山くんがクレープ好きって聞いて、
変更してん」


せっかく、ええ雰囲気やったのに、

またも失言したか？


不安で、ちらっと、表情窺ってんけど。


神山くんの澄んだ瞳はさらにキラキラしとる。


「あの、俺も読んでみてもええかな」


「もちろん！神山くんモデルの女の子も出てくるしな」


「へっ？！」


「ヒロインの、依頼主であり、クレープ屋のお客さん。
なかなか探偵の正体に気付かへんねん」


「あー！そこまで！
続き言うたら怒るから！」


神山くん、立ち上がって、
桐山さんとこ、すたたって、行ってもうた。


「僕も読みたいんで、
桐山さんが添削終わった分、お借りしてええですか？」


「ええよ、ここどうぞ」


神山くん、早速、ソファの隣に座って。読み進めてるねん。


二人の距離近いことには、もやもやするけど。


俺の原稿を真剣な顔して読んでくれてることには感動。

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