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「――大鵬!」

振り向いた先に、愛しい神様の姿。
青蘭はさっと、お辞儀する。

「青、よくAを守ってくれたな」

「いいえ。最初、魍魎はAを襲おうとしました。それを退けたのは、A自身の力です」

「はっはっは! お前がそのように謙遜を言えるようになるとはな! 成長したものだ」

まるでお父さんみたいな優しい目で青蘭を見て。
がしがしと大きな手が、狐色の頭をなでる。

「……!」

大鵬に褒められて照れたせいか、普段は人の形をして隠している、尖ったお耳が頭からのぞいた。
戦ってた時に生えていた尻尾もそのまま残ってて。
でも。
今は逆立っていない。嬉しそうにぱたぱたと左右に揺れている。

「……くすっ」

そんな素直な青蘭の様子に、思わず笑ってしまう。

「わ、笑うな!!」

焦った声がまたおかしい。

「だって、青……かわいい」

私は魄を乗せていないほうの手で、思わず彼の尻尾を突っつく。
もふもふとした柔らかな手触り。
本人は嫌がるからあんまり言わないけど。……私は、彼のこの尻尾の触り心地が大好きだったりした。

「うるさいっ!」

真っ赤になって叫ぶ彼は、やっぱりかわいくて。思わずからかいたくなる。
……あんまりいうと、しばらく口をきいてくれなくなるから、これ以上は言わないけれど。

だから。

「大鵬、どうしてここに?」

私は話をそらすことにした。

「そうです! 今回の魍魎は大鵬様のお手を煩わせるほどのものではありませんでした」

耳と尻尾を仕舞った青蘭も続く。
大鵬は少し、困ったように笑った。

「鞍馬の長天狗に頼まれたのだ」

「……頼まれた?」

「昨年生まれたばかりの若天狗が、消えてしまったので探してほしいと」

「……!」

私は再び掌の上……、もう殆ど輝きを無くしかけている魄に目を向けた。

「人の世の乱れによって生じた陰の気が、この山にも溜まりはじめた。妖は若ければ若いほど、瘴気にあてられやすいからな。万が一魍魎になっていた場合、救ってやってほしいといわれていた」

「……」

「それで、たまたま陰気の濃い場所を見つけたと思ったら、花嫁殿が力を使ったのを感じたのだ。それでやってきた」

「……ごめんなさい」

私は自分の力不足を侘びた。

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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