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ページ35

「……忘れる?」

ゆっくりと大鵬が頷いた。

「必死に生きようとすることをだ。……長く生きれば生きるほどに、よりよく生きようと努力することを忘れてしまう」

「……」

「進歩しようとしない。歩みを止めた状態だ。……それは生きているといえるか?」

「……でも、大鵬は私にいろんなことを教えてくれたよ! 大鵬達はちゃんと生きていて、私にたくさんのことを教えてくれた!」

「そう思うなら、我もAを花嫁として迎えたかいがあったな……」

そういって、唇を重ねてくる。

「A、我の願いを聞いてくれるか?」

「……何?」

大鵬の目が真剣だった。
だから。
私も真剣に聞いた。

「我は人が好きだ。その営みが好きだ。例え我を忘れようと、より良い未来(あす)を掴もうと努力するその姿が好きだ。そうして、人はその未来(さき)で幸せを掴める力を持っている」

「……」

「我はそうして、多くの人が生き続ける世界を望む」

「でも、それじゃあ……!!」

――大鵬は滅びてしまう。

そう言おうとした唇をまたふさがれた。

「未来で多くの人が幸せに生られるのであれば、我は我の命をいつでもくれてやろう」

「……大鵬」

「A、人を憎むのは構わない。だが、お前も人だ。そして、お前の憎しみが吹き飛ばした兵士達……彼らにも家族があっただろう」

「あ……」

私は自分の憎しみに囚われて、見えていなかったことを突きつけられた気がした。

「私は……あの人たちの家族を、私と同じ気持ちにさせた?」

気が付いて、体が震えた。
大鵬が強く、強く抱きしめてくれる。
……私の震えを止めようとするかのように。

「……それでも、その家族もいずれ前を向いて生きていく。それが、人の強さだ」

静かに大鵬が耳元でささやいた。



*

(――どうしよう)

私は取り返しのつかないことをしてしまった。
そう、思い始めていた。
神様も、人も……失った命は帰らないから。

まだ、私は人を許せないけど。
でも。
それで、人を消すのは違う。……そう思い始めていた。


なのに。
私の力は止まらない。

暴走して溢れ出る神通力を。
今。
私自身が、持て余していた。

すると。

「――大丈夫だ」

大鵬の声が力強く響いた。

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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