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「えー、そんなことないよ!」
私は首を振る。
実際に最初の頃の彼もつっけんどんだったけど。それだけじゃなくて、常に言葉の端々に棘があった。
それでも、大鵬の命令には忠実に、私が館を出るときとかはいつも、護衛としてついてきてくれた。
そのおかげで、今はこうして気楽に話せるようになった。
「青蘭は誰より大鵬が好きだもの。その点、たぶん、私と一緒だと思うよ!」
私も青蘭も大鵬が好き。
だから。
私は青蘭には少し仲間意識を持っていた。
「お前、変ったよな」
「そう?」
「昔のお前は、ただ神にすがるほかの人間と同じだと思ってた。でも、今は違うだろ」
「……うーん」
少し考える。
今だって、大鵬をはじめ、屋敷の皆を神様として敬う気持ちも残ってる。
でも。
それ以上に。
実際に彼らと過ごす日常のなかで、よく笑い、よく怒り、よく遊び……そして、他者に優しい。
彼らは私にとって自慢の家族。そんな存在になっていた。
「確かにそうかも。今はお願いするだけじゃなくて、みんなの喜ぶこともしたいって思うよ」
うん! と私は頷く。
「だから、大鵬の好物があるって聞いたら、取りに行きたいって思ったわけだし!」
「で、俺は付き合う羽目になるわけだ」
ため息交じりの声。
(……素直じゃないなぁ)
青蘭は大鵬が好き。
私が行かなくても、風の神に一緒に話を聞いた彼ならば。きっと一人で、ここまで竹の実を採りに来たに違いない。
理由は単純。
大好きな大鵬に喜んでほしいから。
「ま、そういうことにしとくよ」
私は苦笑する。
「その笑いはなんだよ」
「えー。内緒!」
「はぁ!? 意味わかんねーし」
「わからなくていいよ」
最初のころは想像もつかなかった。
こんな風に青蘭をからかったり。お互いに言いたいことが言えるようになるなんて。
それもこれも、大鵬のお蔭。
子どもらしくなかった私……、外の世界に興味を持ったり、甘えたり。それから、冗談を言ったり。そんなこと、考えもしなかった私が、それができるようになっていた。
そんな当たり前のはずの感情を知れたのは、大鵬がいてくれたから。
もちろん、朱ノ姫や老師父のお蔭でもあるけれど。
それもこれも、大鵬が私を花嫁として受け入れてくれたからこそだ。
――私は、大鵬が好き。
14歳の夏の終わりは、こうして穏やかに過ぎていこうとしていた。
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時