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それから。
辺りが一瞬銀色に染まって。
反射的に瞼を閉じた。
すぐに、ぎゅっとつぶった目を開く。
どろどろした黒い塊が、細かく砕けて、四方に飛び散るのが見えた。
その一部がこちらにとんできた。
「―ーAに魍魎ごとき不浄が触れるのは許さん!!」
そんな叫びの後に、大鵬が今までいた場所から姿を消したと思ったら、すぐ私の目の前に現れた。
ヒュンッと音がしたと思ったら、大きな背が私のすぐ目の前にあった。
飛んでくる黒い塊を片っ端から掴んでは握り潰し、時に払い落としていく。
しばらくして。
*
『グゥゥウルァァアアア――!』
唸るような悲鳴が低く響いて辺りを空気を振動させた。
辺りの光も落ち着いて。
いつの間にか砕けた黒い塊が姿を消した。
「山の……気が変わった?」
熱くても、怒ってはいない。穏やかな気。
「魍魎を消したからな。……これが、この山の本来の気だ」
そういって、大鵬が体ごと私に振り返った。
「Aのおかげで山の浄化が叶った。感謝するぞ!」
そういって、今度は頬に唇を寄せられた。
温かくて優しい感触だった。
もう、私の中の大鵬の気のざわめきは収まっていた。
「……あれ? もうざわざわしなくなっちゃった」
「ざわざわか?」
今度は反対の頬に唇を寄せながら聞かれた。
「うん。さっき、額に大鵬の唇が触れて。それからお祈りしてる間ずっと、私の中の大鵬の気がざわついてたの」
「……そうか」
優しい眼差しで、今度は頭をくしゃっと撫でられた。
「そのざわざわが、我に力を与えるのだ」
ゆっくりと穏やかな声。
「ざわざわが?」
大鵬の目を見て聞いた。
そしたら。
「そうだ! Aの中に我の気がある。Aの願いにその気は呼応して、我に力を注いでくれるのだ」
言いながら、ぎゅって抱きしめられた。
「私の願い……祈りが、大鵬の力になるの?」
「そうだ! 花嫁の祈りが我に力を与えてくれる! Aの祈りが我を強くするのだ!」
だから魍魎を浄化できた! と、雲進の上から体を持ち上げられた。お決まりのように、高い高いされる。
(―ーあれ?)
もう、ざわざわはなくなったのに。
心臓が、ドキドキして早くなった気がする。
なんだか気恥ずかしくて、大鵬の顔をまともに見れなくて。
でも。
しばらくこのままでいたい気もした。
――きっと。それが、はじまり。
私は、人喰い神様に恋をした。
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時