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十二章『魍魎と、はじまり』 ページ46

でも。

「何もしなくていい!」

「え……」

あっけらかんと、言いきられてしまった。
一瞬呆けてしまう。
けど。

「Aは雨が欲しいのだろう?」

背中を向けていた大鵬が、首だけ私に振り返る。

「う、うん!」

「ならば、それを願え!」

「それだけ?」

「そうだ」

優しくゆっくり、微笑まれた。
右手の黒銀は、大鵬の頭より大きくなっていた。

「雨が欲しい。……そして、何が起ころうと、この大鵬の勝利を祈れ!」

そういって、振り向いた顔を元に戻す。

「う、うん!」

よくわからないけど、花嫁の……、私の祈りが大鵬を強くするなら、頑張ってお祈りしようと思った。
私は雲進の上で正座して居住まいを正すと、両の掌を組み合わせた。

「私、大鵬を信じる!!」

強く組み合わせた指に力を込めた。
すると。
体が、黒銀に輝きだした。
怖いとは思わなかった。……それが、大鵬と同じ気をしていたから。
私から生まれた光が、大鵬に向かって流れていくのが見えた。

それから。
彼の右手の上の輝きが、今いる山の辺りの一面を覆えるくらい、強く大きくなった瞬間。

「魍魎よ! 雨の神をかえしてもらうぞ!!」

大鵬が叫んだ。

ゴゴゴゴゴオォォォォオオ!!!!!

すごい地鳴りが辺りを襲う。
雲進から見た地面は、ものすごく小刻みに震えていた。

地鳴りがやんだ瞬間現れたのは、形の定まらない、真っ黒な雲みたいなモノ。
ゆらゆらと形を変えながら。
どんどん大きくなる。
大きくなるにつれ、最初は炭みたいな黒さだった雲が、漆を流したような濃い闇に変わっていった。
同時に。
岩肌に足をつけた時に感じた、どろどろとした気も濃く漂ってきた。
強いけど。大鵬とは違う。
優しくない気。……どろどろした気は辺りに熱を放っている。熱で景色がゆらゆら揺れる蜃気楼が見えた。


なのに。
不思議と私は熱くなかった。
ずっとやさしい大鵬の腕のなかにいるような感覚。
大鵬が私にくれた口づけが。……彼がくれた気が私を守ってくれていた。
だから、ありがとう、って感謝して。

(―ー大鵬! 頑張って!!)

さらに祈った。
私の中が今までにないくらい熱くなって。
私を包む黒銀がさらに濃くなって。
大鵬が地面を蹴った。
魍魎に向かって右手を突きつけながら、彼よりずっと大きな黒い塊に飛び込んでいく。

瞬間。

ピカアアァァアアア――――――!!

目を開けられないくらい、まぶしい閃光が辺りを包んだ。

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます!  誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時

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