偽り笑って 5【3年A組】 (ページ39)

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朝日が差し込んだ頃、
柊は郡司の手にかけられた手錠を外した。

「……なんの真似だ。」

「…貴方なら、俺の最期を見届けてくれると思って。」

そう言いながら携帯を渡す柊の腹を、郡司は殴る。

「あ"…！ゔ…ぅ、っ……」

柊はあまりの痛さに、腹を押さえて地面に蹲った。

「…ふざけやがって。
事が済んだら、コレをお前の手にはめてやっからよ」

そう言って郡司は手錠を指した。

郡司は、柊を信じた。

事が終わったら……つまり、待つと言う事。事件を最後まで見届けると言うのだ。

それを聞いた柊は、腹を押さえたまま笑った。

「…っいった……、」

.

「もう、8時だ」

冬華が教室にある時計を見上げ、ふと呟いた。

あの時の、瓦礫に遮られていく柊の姿が……冬華の脳裏に焼き付いて離れなかった。

行かないでほしかった、行かせたくなかった。
それなのに……止められなかった。

《たった今、柊容疑者が屋上に現れたと報告がありました！》

そんな声が聞こえて、全員が顔を上げた。

「先生が現れた……」

「これが終わったらどうするつもりだろ？」

「……そりゃ、警察に自首するんじゃない…？」

その時、急に何かを思いついたのか…徐に茅野が立ち上がり、ドアの方に向かった。

その手を宇佐美が押さえる。

「ちょ、ちょちょ……！どこ行くの？！」

「死んじゃうかもしれない…、」

「……え？」

茅野の言葉に、全員が目を見開く。

「どういうこと…？」

「…前に見たって言ってたの…、
全て終わったら屋上から飛び降りるって夢を…っ」

「…なんだ、夢か……」

「……ずっと気になってたんだけど。
なんでわざわざ屋上に出るんだろう？

真相を語るだけならっ、教室でもいいはずでしょ？」

はっ、と。
冬華の目が見開かれた……

その目には、涙が浮かぶ。

「……全てを話した後に、飛び降りる為……？」

「ダメ……絶対に死なせないッ…！！！」

冬華は拳を握りしめ、走り出す。

それに続くように……
A組の生徒たちは教室を飛び出した。