夏が死んだその日【文スト】【東京喰種】

焦りと油断 ページ5

時間を忘れ、かなりの量を読み終えた頃。
ページの間にしおりが挟まっていた。
私はそれを取り出す。


「…なんだこれ。」


挟んだ記憶がない。そろそも本を開くこと自体初めてだ。
いや、もしかして実は読んだことがあるのか？
それならなんとなく理解できる。
読んでてさっきっから、先が大体予想できるのだ。
かなり鮮明に。
例えば、りんごの木には何が実でしょうか、という質問に対して「りんご」と答えれるほど鮮明なのだ。


「ま、いっか。」


と、本の続きを読み始める。

ある程度、進んだ頃。
突然、めくったページが真っ赤に染まっていた。
読めないほどではない。しかし、その光景は異様だ。
その赤は血の匂いなのだ。ただ、そこが問題ではない。
読んでる途中に鼻血が出たとか。
明らかに私の本ではないからその人が本を入れたまま、喰種とかにあって戦った結果こうなったとかあるだろう。

なにが異様で問題なのかというと、そのページだけが突然赤くなっていることだ。
紙なのに後ろのページや前のページにそれは広がっていなかった。
そのページ以外、どのページも綺麗だった。
突然、そのページだけ赤くなっているのだ。
隠したいことでもあるのかな、そう思いながらチラッと時計を見る。

かなりいい時間帯になっていた。
私は電気を消して、出していた私物をリュックに入れる。
そして充電していた携帯と充電器を取って、部屋を出た。

街はネットカフェに入った時とは正反対の景色になっていた。
寝ていた街灯は目を覚まし、起きていたオフィスビルは眠りについたようだ。
私は街を歩きながら携帯を確認する。
中也さんからのメールが届いていた。
通行人、主に飲んだ人の邪魔にならないように少し暗い路地のほうに入りメールを返す。


お酒の臭いが鼻を刺す。
千鳥足になりながら、1人の男性がこの路地に入ろうとしていた。
この路地はせめて2人が通れるくらい。
私は体を横にそらし、彼に道を譲る。
しかしその人は空いた隙間を通るわけでもなく、路地に入ることをやめて引き返すわけでもなく、突き進んできた。
このままではぶつかってしまう。

どうすればいい。

高いビルとビルの間にできた狭い路地、圧迫感、疎外感。
私は酷く後悔している。路地に入ったことを。
圧迫感で気持ちが落ち着かず、焦る。
私はどんどん後ろに下がる。
後ろに、後ろに下がる。
気がついたときには、後ろに道はなかった。

それと同時に、背後に気配を感じる。
完璧に背後をとられた。

無抵抗→←拝啓カフカ

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