夏が死んだその日【文スト】【東京喰種】

ナツが生きていた日々 ページ27

もう、どうでもよかった。

母や父のために研究材料にさせられ、喰種に良い世界のために興味もない戦いをして、包み込んでくれる仲間の元で戦えると喜んだ矢先に、私は騙され彼らから半々呆れられた。

あんていくが危ない、と言われて戦ったのにそれはアオギリの樹がコクリア輸送車の中から喰種を引き出す手助けになった。
それに加えて、私は凶悪喰種として生きることになった。

更に言えば。

その事件のせいで私の父と母は、喰種でもないのに喰種として捜査官に殺された。
人間なのに殺された。
私がいると、事が良くない方向に進むのはもうわかっていた。

死にたかった。

でも、あんていくの彼らは私に優しくしてくれた。
高校に入れようとしてくれて、錦さんやトーカ、金木くんが勉強を教えてくれた。お金も免除してくれた。
死ななかった。

しかし私はこの通り、誰かを止めることもできなければ、止められなかった責任も果たせなかった。


昔からだ。


守ってもらう勇気もなければ、守れる強さもない。

もう、そろそろ殺して欲しかった。

顔色を見て、目を見て、感情を考え、最適な会話をし、時には影を薄くして、会話が暑くなり過ぎれば冷まして、会話が寒くなってきたら温めて
そんなことしかしない、つまらない。

つまらなかった。



今の世界も。

この後もし仮に彼を殺したとして、私は人の前で人を殺すことになる。正真正銘の人殺し。
誰かの様に悪い世界にいるわけでもないから、抹消してくれるわけでもない。
でも、もうどうでもよかった。
この世界を壊れようと、私に壊されようと。

私の体が赫子で包まれるのがわかった。

芥川さんの攻撃から守ろうとしてくれたのか。

いっそ、このまま、赫子の中で眠りたい。

蛹の様にでもなく、冬眠でもなく、土に埋められた棺桶の様に、二度と目が覚めない様に眠りたい。

お腹も空っぽだから傷もどうせ塞がらない。

私がこんなことを考えている間に芥川さんが私にした攻撃の跡も塞がらない。

なんだったら、もう寝たい。

疲れた。

私が起こしたこと、全てにつかれた。

早く芥川さんをどうにかして、私がさっさと眠ればいい。

そうすれば探偵社も守れるし、事は終わる。


私の目はもう、見えなかった。

暗く、虚で、空っぽな視界の中、地面に立つ芥川さんの気配を探した。

11時の方向に彼はいた。

私は彼の脇腹に、勢いよく鱗赫を叩き入れた。


叩き入れた瞬間、私の力は尽きた。


ナツが死んだ日になった。

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