夏が死んだその日【文スト】【東京喰種】

襲撃を襲撃する独りの喰種 ページ22

「探偵社はどうなんだ？」


私は聞く。死ぬ口実を作るため。
人喰いが活躍すればこの世界で人喰いとしての罪は消えるはずだ。
喰種が活躍すれば、社会やCCGからの監視を逃れれるように。高槻泉や月山グループのように。

その答えに彼は、それは本当だ、と答えた。
私はすぐに向かった。
探偵社に。


私は入り口から強行突破して外に出る。
太陽が消え、月が笑ってる。満月だ。
しかし、街にはまだ子供連れがいる。
そして、なんなら今の時間に襲撃に行くんだから彼らはいるだろう。


彼らの役に立てる。


きっと今までで一番走っている。
風が私に追い付かないくらい、走っている。
なのに、探偵社がとても遠く感じた。



そして、やっとの思いで着いた探偵社。
私は耳を済ませる。
探偵社の中、彼らの呼吸、作戦会議、私の名前。
彼らはまだいる。

入り口に目を移す。
スーツの人が、入り口ごと塞いでいた。
全員、探偵社の中を覗くようにして立っている。
誰も、何事だ、と騒めく大衆に目もくれない。
それは彼らの背後に立とうとしている私の存在に気がつくことがない、ということだ。
満月なのに、ね。

私は彼らの背後に立つ。

異常なほどたつ砂埃と少々飛び散るコンクリート、
痛いと悲鳴を上げるように揺れる地面。

彼らに異変を告げる。
それが届くと同時に、私の目の前にいる人の視界は暗転する。
私は死なない且つ、目が覚めるのが明日の朝となるくらいを目指して地面に叩きつけた。


「どーも。人喰い兼、ナツ。赫者でーす。」


と、ニヤッと笑う。
今更だが、私はマスクを被るとテンションがおかしくなる。
いや、それだと語弊がある。
喋りやすくなるというか、隠れていると気持ちが楽なのだ。
ある意味マスク依存症だ。もしかしたら、マスクをしている間が本心なのかもしれない。


私の戦闘の基礎は四方さんなら戦い方だ。
それに嘉納の訓練。
私が生きるために見つけた戦い方は、重心を安定させず、何時でもどっちにも動けるようにすること。


「ちょっとお腹が空いたんで、是非とも血だけ貰いますね。」


と、噛み切らないほどに噛みつく。
大体、予防接種くらいの痛みだろう。
これくらいなら早くて1週間で痛みも傷もなくなる。

しかし、噛み付かれた人は噛み付かれた驚きと死の恐怖で失神してしまった。


「ありがとね。」


きちんとお礼をして、地面にゆっくりと寝かせる。
凄く、心地よさそうに寝ている。

さて…と、私は警戒心剥き出しの彼らに視線を向けた。

最強でも完璧でもなく普通の→←ナツなんて死ねばいいのに

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す