冬の日 ページ10
冬の日、真っ白な雪の日。
私は明日、自分の親達から離れて、あんていくがある街に引っ越して、名字も柏村から霧島に変えて生活するところだった。
そして、その作戦は極秘に行われていた。
母親、父親、にすら黙って。
このままだと、彼らの命はないだろう。
アオギリに私は触れてしまった。
アオギリの木に、狙われかけていた。
彼らが傷つけられる前に。
私は逃げる。
その予定だった。
その予定だったのだ。
予定が、崩れた。
「ただいま」
と、私はいつも通り家に帰った。
明日の計画に胸を躍らせてはいたが。
しかし、玄関を開け異常な匂いがした。
喰種の匂いが、すごく強かった。
とんでもなく、強く匂いがしたのだ。
居間に向かうほど、匂いがキツくなっていく。
私は恐る恐る、居間に繋がる襖を開けた。
そこには、赫子を首元に刺されている父と母がいた。
「A!!」
「俺たちを助けてくれ…!!」
「アナタが、この人たちの言うことを聞くだけで、聞くだけで変わるの!!」
「おい!!」
そう叫ばれてしまう。
私はびくっと、肩を跳ねさせる。
私なら倒せるのか、いや動いたら彼らが死んでしまう。
頭の中はいっぱいいっぱいになっている。
頭を動かさなければいかないのに、動かない。
動かせない。
ついて来ない。
「アンタを、産んだ、私がバカだった…」
そう、ポツリポツリ、母が話した。
私はその言葉に絶望した。
そして、動こうと思った。
しかし、そんなことで彼らを楽にしていいのかわからなかった。
でも、彼らを殺したくはなかった。
「どうするんだ。早く、早く答えろ!!」
私はゆっくりと言葉をつなげる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
幼稚園児に本を読むように、丁寧に、考えて。
「…正直、今のアナタ達に絶望、しました。
でも…でも母親で…父で……両親で、両親を、守るのも悪くない…と思える気がして…。」
私は彼ら、喰種に連れて行かれる事にした。
明日からの幸せを手放した。
たった2人のために、何人もの努力を捨てた瞬間だった。
こんなに暑い日が本当にあったのだろうか、そう疑いたくなるほど寒かった日だった。
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hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» >>また、他にも評価が高い作品が多い中で、この作品を読んで頂きありがとうございました。 少しでも楽しませられたら幸いです。 本当にありがとうございました (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» ご指摘、ありがとうございました。本当に助かります…orzすぐ、誤字や誤った設定をしてしまう癖があり、誤字などがある作品の印象って悪くなると思うんです…。なので、珈世さんのような方がいらっしゃると本当に助かりますorz >> (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» >>また、文ストと混ると言うことは、文ストは好きだけどグロは苦手、と言う人も読めるような、マイナスな印象を与えず書けていたみたいで良かったです。 最後になりますが、他にも引き寄せられる作品がある中で読んでいただき本当にありがとうございました。 (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» Nightさん、コメントありがとうございます。内容を好んでいただけて、本当に嬉しい限りです…昇天できます…。それと、文ストと混ぜる、そして文ストの世界に転生する夢主が喰種という不思議な設定が上手く惹きつけられる要素になっているようで安心しています…orz >> (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 夜雨ナナトさん» >> 最後になりますが、数多くの作品の中でこの作品を読んで頂きそして、応援していただき本当にありがとうございました (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hitoesasami | 作成日時:2020年1月15日 0時