偶然なんてない/gr ページ8
この状況を偶然と呼ぶべきか奇跡と呼ぶべきか。
定時後に私の作成した書類に不備が見つかって、一人残ったオフィスで足りない資料を探しにやって来た資料室に上司がいた。
それもぐっすりとソファで熟睡した状態で。
廊下から漏れた光で辺りは多少見えるものの、資料を探すとならばさすがに室内の電気を付けなければいけない。
だけどこんな偶然もう二度と起きないだろうと、私の中の悪魔が囁く。
いつもの厳しい眼光は閉ざされ長い前髪が瞼すらも隠して、狭いソファには入りきれない長い足がはみ出てぶらりと投げ出されていた。
きっちりと着ていた黒いスーツは丸めてお腹の上に、緩めたネクタイと三つほど空いた白いシャツの隙間から見える鎖骨に、ゴクリと唾を飲み込んだ。
悪魔に魅了されたかのように一歩、また一歩と吸い込まれるように足が進む。
触れそうなほどの距離までたどり着くと、小さく「ん…」と漏らし身じろいだのを見て、起こしてしまったかと息を止めたがまたスヤスヤと寝息を立てる様子にホッと息をついた。
そういえば最近、新規の大手企業との契約成立で忙しそうだった。
何日も会社に泊まり込みだという話を同僚がしていたのも聞いた。
でもこの上司、グルッペンさんはいつも身だしなみがきちんとしていたし、疲れた様子なんて感じさせなかったから…。
お疲れ様です。
起こさないよう声を潜めて呟く。
もう少し寝かせてあげよう、どうせ今夜の予定なんて私にはないし好きな人の寝顔が見れるなら彼にとっても私にとってもいい事じゃないか。
どれほどの時間見つめていたか分からない、グルッペンさんの顔が向きを変えたと同時に少しズレたメガネが可愛かった。
そのままでは寝苦しいだろうという気持ちと、触れてみたいという下心が私の手を動かす。
ドキドキと煩い心臓の鼓動が手まで伝わってきそう。
震えながらグルッペンさんのメガネに手をかけた瞬間―――
「それを取ったらキスするぞ。」
射貫くような赤い瞳がこちらを見ていた。
いつの間にか掴まれた腕。
驚いて硬直した私にグルッペンさんはニヤリと笑った。
「どうした？取るのか？取らないのか？」
そんなの答えは決まっている。
チャンスの女神に後ろ髪はないのだ、この奇跡は今掴まないと後悔する。
恐る恐る黒色のフレームを取り去ると、グルッペンさんの笑みは更に濃くなった。
「いい子だ。」
引き寄せられる体。
キスの合間にグルッペンさんが零した好きだという呟き。
偶然なんて、果たして本当にあったのだろうか。
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - だいぶ前の小説にコメント失礼します。あなた様のエミさんの認識はどうなってるんですか…変態ですか……好きです｡｡｡｡｡｡｡ (2020年12月2日 22時) (
レス) id: 5e03690c33 (このIDを非表示/違反報告)
生真面目な炊飯器(プロフ) - あ、良かったーびっくりしたゾ（笑）というか見てますよ…！もう光の速さで短編集3へ飛んでったンゴ！そして幸せになりました(小並感) (2017年11月19日 9時) (レス) id: b04e9ddf40 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 生真面目な炊飯器さん» 垢間違えてました(笑)短編集３もできましたのでぜひ見て頂けると嬉しいですー！ (2017年11月19日 1時) (レス) id: 5e55a572da (このIDを非表示/違反報告)
生真面目な炊飯器(プロフ) - 短編2までお疲れ様でした♪次は3ですか！楽しみだー（*＾＾*)心ぐるぐるっ待ち♪してます（笑）いつも素敵なお話ありがとうございます！ (2017年11月18日 6時) (レス) id: b04e9ddf40 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - ひらめさん» ひらめさんコメントありがとうございます！そして今まで気付いてなくてすみませんでした！(笑)シッマは難しいんですがコネシマスター達の為にもっと書けるように精進します！！今後も仲良くしてくださいね！！ (2017年11月15日 19時) (レス) id: 5e55a572da (このIDを非表示/違反報告)
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