事実は小説より奇なり/kn ページ12
約束の時間は午後１時。
３０分も早く待ち合わせ場所に着いた私はそわそわと辺りを見回す。
待ち人らしき人の姿はさすがにまだいないので、街路樹をぐるりと囲うコンクリートに腰を下ろして目印のミステリー小説を開いた。
今日はＳＮＳで知り合った人と初めて対面する事になっていた。
お互い本が好きで、毎日話している内に会ってみないかと言われた。
彼の紹介してくれる本はいつも面白くて、会話の内容から博識であるし、きっと優しくてインテリな大人の人だ。
顔は知らない。
そっちの方が面白そうだと彼が言ったから。
私はミステリー小説を彼は歴史の小説を、お互い目印を決めて待ち合わせをしようと。
子供のような遊び心が可愛いと思った。
開いたミステリー小説の内容なんか一つも入ってこない。
それよりも彼がどんな人なのかわくわくしているから、小説に集中できないなんて生まれてはじめての経験だ。
ふふっと一人笑ってしまうと、不意に目の前に影ができた。
「それそんなにおもろい？」
掛けられた声に顔を上げれば、如何にもチャラいですと言わんばかりの眩しい金髪のイケメン。
なんだ、ナンパか。
「うわ無視？もっと感じのええ子やと思ったんやけどなぁ。」
なんとでも言ってくれ、こっちは今それどころではない。
というか無視してしてるんだからさっさと他へ行ってくれ。
「もっとこう、大人のお姉さんってイメージやったんやけどなぁ…結構地味やな。」
ナンパを無視しただけでこの言われよう…。
文句の一つでも言ってやろうか。
いや、揉めたら面倒だし…無視を貫くのが、
「でも小説の趣味はさすがにええな、Aちゃん。」
突然呼ばれた名前にパッと顔を上げる。
にんまりと笑う顔の横で掲げられた本は絶版になった歴史小説、となると…。
「コネシマ、さん？」
「せやで、初めましてやな。」
「イメージと全然違う…。」
「失礼やな、それはお互い様やろ。」
「先に失礼な事言ったのはコネシマさんですよね？地味ってちゃんと聞こえましたよ？」
「あ？ほんま？すまんすまん！」
「でも、小説の趣味はさすがですね。」
「それもお互い様やな。」
にっこりと笑う笑顔は全然大人なんかじゃなくて少年のようだった。
優しいどころか失礼だし…イメージの崩壊が凄まじい。
想像していたコネシマさんとは全く違う豪快な笑い声にがっくりと肩を落とした。
現実なんてこんなものだ…。
だけどこんな出会いから始まった私たちの関係が、今後何十年も続くことになるなんてこの時はまだ思ってもみなかった。
事実とは小説より奇なり、とはよく言ったものだ。
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - だいぶ前の小説にコメント失礼します。あなた様のエミさんの認識はどうなってるんですか…変態ですか……好きです｡｡｡｡｡｡｡ (2020年12月2日 22時) (
レス) id: 5e03690c33 (このIDを非表示/違反報告)
生真面目な炊飯器(プロフ) - あ、良かったーびっくりしたゾ（笑）というか見てますよ…！もう光の速さで短編集3へ飛んでったンゴ！そして幸せになりました(小並感) (2017年11月19日 9時) (レス) id: b04e9ddf40 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 生真面目な炊飯器さん» 垢間違えてました(笑)短編集３もできましたのでぜひ見て頂けると嬉しいですー！ (2017年11月19日 1時) (レス) id: 5e55a572da (このIDを非表示/違反報告)
生真面目な炊飯器(プロフ) - 短編2までお疲れ様でした♪次は3ですか！楽しみだー（*＾＾*)心ぐるぐるっ待ち♪してます（笑）いつも素敵なお話ありがとうございます！ (2017年11月18日 6時) (レス) id: b04e9ddf40 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - ひらめさん» ひらめさんコメントありがとうございます！そして今まで気付いてなくてすみませんでした！(笑)シッマは難しいんですがコネシマスター達の為にもっと書けるように精進します！！今後も仲良くしてくださいね！！ (2017年11月15日 19時) (レス) id: 5e55a572da (このIDを非表示/違反報告)
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