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「面白かった？」
机の下を覗き込んで笑う鬱先生。
面白いかどうかと聞かれれば、まぁそれなりにというところか。
「Ｂ級作品を見せられた気分ですね、キャストは悪くないのに台本が悪い。」
「そうやなぁ…あの子が下手な芝居止めたらここでしてもよかったんやけどな。」
差し出された手は取らずに、机の下から腰を上げる。
同じ体勢でいたせいか、少し凝った体を腕を上げて伸ばした。
「まぁでもそれなりに楽しめましたよ。」
「お、ならご褒美貰えるんかな？」
「えぇ払いますよ、授業料。何かリクエストはありますか？」
「ん〜なら消毒のキスで。」
「すごく似合わない台詞ですね。」
それでも拒否する理由もないので、鬱先生の首に腕を伸ばした。
少し屈んだ先生の唇に要望通りのキスをする。
先ほど先生が彼女にしたであろう、大人のキスを。
「佳乃、キス上手くなったな。」
「鬱先生の教え方がうまいからですかね？」
「これならどんな男もイチコロやな。」
にやりと人の悪い笑みを浮かべる鬱先生に、同じように笑って返す。
あのつまらない婚約者にいつかこのキスをしてあげよう。
１２の頃から婚約していた私がこんなキスをしたら、あの鋭い男ならきっと気付くはずだ。
私が婚約中に他の男と関係を持っていたことに。
その時あの男は何を思うのだろう。
プライドの高そうな人だから憤慨して婚約破棄、いや私の家の利益を考えれば黙って気付かないふりをするだろうか。
どちらにせよ彼の自尊心は傷つけられる事になるだろう。
「いい顔するようになったな、悪い顔して、最高に楽しそうやで。」
「鬱先生には感謝してますよ。」
何もない、真っ白だった世界が、鬱先生といる事で色づいていく。
どす黒く塗られていく。
色鮮やかな、綺麗な世界ではないけれど。
無の感情しかなかったあの頃よりもずっと面白い。
「もっと悪い女になりな。」
頬を撫でる鬱先生の手。
その手と表情から先生の真意が伝わってくる。
もっと堕ちてこい。
もっと俺を楽しませろ。
「言われなくとも。」
あなたが私を楽しませてくれるなら。
どこまでも堕ちて行こう。
失うものなど何もないのだから。
あなたと過ごすこの時間だけ、私が生きていると感じられるの。
重ねた手のひら。
私たちの間にあるのは愛情なんかではないけれど。
確かにそこには絆というものがあった。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオ - コメント失礼します。思わず一気読みしちゃいました！貴方様は神ですか？ありがとうございます。 (2022年1月28日 22時) (
レス) id: 99e64baad8 (このIDを非表示/違反報告)
か(プロフ) - この作品を生み出してくれて本当にありがとうございました。 (2020年3月30日 16時) (レス) id: f33d68be6d (このIDを非表示/違反報告)
なな - 単推しとニ推しとか…もうにやけとまんねぇ() 語彙力分けてほしい(( (2019年9月7日 17時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮、(プロフ) - コメント失礼します…！！もう文面も設定も好みのドストレートすぎて思わず一気に読んで、衝動的にコメントを書いてしまいました。本当に楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました！！ (2019年1月11日 0時) (レス) id: b4451f6a6c (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 一話目からドストライクすぎてﾝﾝｯｯってなってます本当にありがとうございます崇めます (2018年12月3日 21時) (レス) id: d493129e91 (このIDを非表示/違反報告)
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