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大きな爆音と共に夜空に上がる大輪の花。

「まじか。ここめっちゃ見えるやん。」
「すっごい…。」

ちょうどビルの隙間を縫うようにして見える花火。
目を輝かせてそれを見上げるトントンの横顔。

「今日友達とこれを見に行く予定だったの。でも人混みで見るよりここで見た方が絶対キレイだよね、残業してよかったよ、ビールも飲めたし。」

直接顔を見て言う勇気はなかったけど、いつもより素直に言葉が出た。
屋上で二人で花火を見てるというなかなかロマンティックな状況がそうさせたのだろうか。

「なんや、頑張って調整しとったからデートかと思ったわ。」
「そんな相手いませーん。」

てゆうか、私が今日の調整の為に残業してた事知ってたんだ…。
それで落ち込んでると思ってこうやって気を使って呼んでくれたんだよね…。
あぁもう!そういうところ本当に

「好き。」

つい零れてしまった言葉は、今までで一番大きな花火の音に吸い込まれた。

「ん?なんか言うた?」
「ううん、何にも。」

トントンに届きはしなかったけど、それでよかった。
胸の想いを口に出すことでスッキリした気分になり、ビールの缶を傾けた。

「よっし!残りの仕事も頑張って片付けますか!」
「そやな。」

両腕を夜空に突き上げて気合いを入れる。
今なら私、高速で作業できちゃいそうだわ。

「あ、A。」
「んー?」

屋上の扉に手をかけた瞬間、後ろから呼ばれて振り返る。

「俺もAの事、好きやで。」
「は?」

にこりと微笑んでいるトントン。
…さっきのしっかり聞こえてるんじゃん!
ポカンとした表情のまま固まる私の横でトントンは少し身をかがめる。

「来年も一緒に花火見ような?」
「会社の屋上で?」
「それまでには社畜卒業したいわ…。」

そう言って私の横をすり抜けて階段を下りるトントン。
私の事好きって言ったよね?
だったら、触れても、いいよね?
ずっと触れたかった大きな背中に飛びつき頬を摺り寄せた。

「とりあえず残業デートでもしますか。」
「せやな、終わったら飯でも行こか。あとでさっきのもう一回言ってな。」
「ふふっ、日付が変わる前に終わらせたら言ってあげる。」
「言ったな?俺めっちゃ本気出すからな?」

自信満々で宣言するトントンの腕に絡みついて階段を下りる。
さぁ楽しい残業デートだ!社畜万歳!

お礼企画その3/kn→← →続



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ひとちん(プロフ) - NORTHさん» NORTHさんコメントありがとうございます!初めてのギャグがもはや黒歴史になっていたところでそのお言葉…嬉しいです…!よければ短編集2の方もどうぞよろしくお願いします!あそこまでぶっ飛んだギャグはありませんがww (2017年10月29日 19時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
NORTH(プロフ) - 突然ですが初コメ失礼します!ひとらんの回の主人公が面白すぎました…あれですね、貴方様はギャグセンもあるんですね!すごいです!リスペクトです!頑張ってください!(語彙が…無い!) (2017年10月29日 19時) (レス) id: ecb1a421ae (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - ひとちんさん» こちらこそ(*´▽`*)これからもよろしくお願いいたします! (2017年10月8日 16時) (レス) id: cb678ab533 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - ヒメ*さん» ヒメ*さんコメントありがとうございます!最近更新サボってますが頑張って更新するので気長にお待ちいただければと思います!感想下さってありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2017年9月10日 18時) (レス) id: 5e55a572da (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - こんにちは!いつも読んでいます!『総統の愛した甘味屋さん』を読ませていただきました!ひとちん様の書く小説は本当に素晴らしいな、と心から思いました!応援しています!これからも頑張って下さい(*^O^*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひとちん | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年8月6日 4時

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