お礼企画その２／tn ページ25
「A〜そっち終わりそうか？」
「無理無理、日付が変わるまでに終われば御の字だわ。」
明日からお盆休みという事で今週はいつもより多めの残業をして、今日は定時に上がれるよう調整してきた。
本来なら今頃は浴衣に身を包んで友人たちと花火大会に行く予定だったのにな…。
定時少し前、部長から取引先のシステムトラブルが報告された。
自分の持ち分で手一杯の同僚たちは顔を青くしてお互いを見渡した。
昔こんな光景見たな…あれだ、学級会で係が決まるまで帰れないってやつ。
こんな時に手を上げる奴って…。
「部長、それ俺やりますわ。」
こういう奴だよね。
みんなの為に自己犠牲を惜しまない奴なんだよなぁ、そういうとこ本当に好き。
机の上に置いたスマホに手を伸ばして友人たちのグループに謝罪の言葉を打つ。
「トントン、私にも半分回して。手持ちの仕事終わってるから。」
「あれ？A今日予定あったやろ？今週残業しまくって調整しとったやん。」
「大丈夫、大した用事じゃないし。」
「ほーん、なら頼むわ。」
すまない友人たちよ、私は友情より愛に生きる。
とは言ってもただの仕事なんだけど、こうやって好感度を上げようと奮闘する私をどうか許して欲しい。
８時を過ぎた頃、ついに社内に残ったのは私とトントンの二人になった。
自分の仕事が終わった同僚たちが申し訳なさそうに帰ったり、手伝おうかとか声を掛けてきてくれたりもしたが、笑顔で見送った。
ぶっちゃけトントンと二人きりになりたいから早く帰ってくれと思っていたのは内緒だ。
二人きりの社内で静かにパチパチとタイピング音が鳴る。
たまにトントンの大きな背中に目が行ってしまい、仕事はいつもより捗らなかった。
逞しい背中に後ろから抱き着いてみたいなぁなんて思っているところに、トントンから声を掛けられた。
盗み見をしていたのがバレないように、少しそっけない口調の返事になってしまった。
折角二人きりなんだからもう少し可愛げのある言い方できればよかったのに…。
しゅんとしていると、ん〜と言いながら体を伸ばすトントンがこちらを振り返る。
慌てて顔を取り繕うと、眉を下げてトントンが笑う。
あ、その顔もたまらなく好き。
「ちょい休憩しようや。コンビニ行ってくるけどなんかいるか？」
「いや、いらない。」
「うい。」
財布を掴んで部署を出て行く背中を見送る。
しまった、一緒に行こうって言えばよかった。
「あぁもう、うまくいかないなぁ…。」
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