３３ ページ33
「A様、リヒト様がティータイムにされるそうです。」
「分かりました、すぐに向かいます。」
屈辱の日々は４年続いた。
ここアスタムに連れて行かれた日に王子が言った通り、彼の城という宝箱に文字通り、私は幽閉された。
与えられた部屋から出る事は許されず、王子が求める時だけお茶を入れお菓子を作る。
部屋に呼びに来た兵士に連れられて監視の元厨房へ向かう。
部屋に出入りできるのは王子だけで、外からの情報は一切入ってこない隔離された空間。
ワズルの状況もあの日から全く分からなくなってしまった。
幾度となく私に触れてこようとする王子を殺してやろうと思った。
私の拒絶の反応を面白がって、決して本気で迫っては来なかったから体を許した事はないけれど、そういった日は必ずグルッペンを思い出して涙を流した。
もう一度グルッペンに会いたい。
そう思ってずっと耐えてきたのだ。
「やぁA、君も一緒にどうだい？」
カートに乗せたティーセットを運んで王子の元へ向かうと手を上げて微笑む王子。
視線も合わせずに、黙々とテーブルの上にお菓子とお茶をセットしていく。
「結構です、今日はやけに早いティータイムですね。」
「あぁ、この後ワズルの神官が訪問する予定でね。長くなりそうだし先に休憩しようと思って。」
カチャリ、手に持ったカップが音を立てた。
ワズルの神官…。
「オスマンさ、様が？」
「おや、知ってるのかい？」
「あ、いえ…昔雑誌で見かけた事があって、お綺麗な方ですよね。」
「はは！そういえばA、ワズル関連の雑誌買い漁ってたよね。神官のファンだったんだ。」
「えぇ…まぁ。」
４年ぶりに耳にするワズルという単語に激しく動揺しているのが自分でも分かる。
できる事ならオスマンさんに会いたい、そして叶うなら私がここにいる事をグルッペンに知らせて欲しい。
震える手がカチャカチャとお皿を揺らす。
私の動揺にこの王子が気付かないわけもなく、口元をニヤリと歪めて笑った。
「ねぇA、ワズルの神官に会いたい？」
「え？」
「君がそんな風になるなんて珍しいからね、よほど好きなんでしょ？」
甘い蜜のような誘惑。
飛びつきたくなるようなその言葉にぐっと理性を持って口を噤む。
オスマンさんに会ったところでどうするというのか。
二人きりで会えるという保証はない。
王子の目の前でグルッペンの名前を出すわけにもいかない。
ならば…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 936人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なな - うん。 いや最推しにこんなんされたらもう本当ヤバいなぁ…((語彙力ｯ いやグルちゃんかっこええ~… (2019年9月7日 18時) (
レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ＊ - グルさんイケメン…最推しです(*´ー｀*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 75さん» 75さんコメントありがとうございます！楽しんで貰えたなら幸いです！！続編も次回作も早くお届けできますよう頑張ります！これからもよろしくお願いします！！ (2017年8月22日 12時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
75(プロフ) - ひとちん様初めまして。いつも楽しみに読ませて頂いております。この度は完結おめでとうございます！秀逸な作品構成にどきどきしながらページを送っておりました。続編、次回作共に首を長くしてお待ちしてます！体調にはお気をつけてお過ごしくださいませ。 (2017年8月22日 12時) (レス) id: 97ace52c10 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 水鈴さん» 水鈴さんコメントありがとうございます！感想とても嬉しいです！！2では二人のその後などを書かせて頂く予定ですので完成したらぜひそちらもご覧になってくれると嬉しいです！これからもよろしくお願いします！！ (2017年8月21日 22時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
