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グルッペンと別れてから2年が経った。
たまに町に行くとワズルの噂が回ってくるものの、グルッペンの話は一切出なかった。
町へ行く日は決まって書店に寄りワズルの記事が書かれた物は全て購入した。
写真が載っているものは隅の方まで見つめてグルッペンの姿を探したけど、結局たまに神官様の恰好をしたオスマンさんが見つかるだけだった。

まぁ元々アスタムの反乱軍だし、今ワズルにグルッペンがいると知ればアスタムもワズルに侵攻するだろう。
今の国力を考えるとワズルがアスタムに勝てる見込みは少ない。
もう少し力をつけるまでその存在を隠しているのだろう。

公園のベンチで先ほど購入した雑誌を見ながら一人溜息を吐く。
せめて顔くらい見れればいいのにな…。

「すみません、お嬢さん。」
「はい?」

目の前にふと影ができ、声を掛けられたので顔を上げれば、そこには上品な衣服に身を包む見るからにお金持ちそうな青年が立っていた。

「もしかして森に住むお菓子売りのAさんですか?」
「はい、そうですけど…。」
「あぁやっぱり!ここの領主が言ってた通り可愛らしいお嬢さんだ!」

なんていうか、すごく陽気な人だ。
領主から私の事を聞いたという事はもしかしたらどこかの国の王子なのかもしれない。
私と同じくらいの年代の彼は見るからに纏うオーラが違った。
ねぇグルッペン、本物の王子様はこんなに爽やかよ、あなたにこんな真似ができるのかな?

将来グルッペンが国を手に入れた時、目の前の彼のように陽気に他国のお偉いさん方を相手をするのかと思うと笑みが零れる。

「失礼、はしゃぎすぎて笑われてしまったな。」
「あ、すいません。違うんです、ちょっと知り合いの事を思い出していただけで。」

しまった、目の前の彼の存在をうっかり忘れてしまって誤解されたかもしれない。
慌てて否定すると、彼は片手を胸に当て綺麗にお辞儀をした。

「私はアスタム帝国の皇太子、リヒトと申します。」
「皇太子、様…。」
「以前から何度かここの領主にAさんのおいしいお菓子を戴いてまして、ぜひお会いしてみたかったんですよ。」
「光栄です…。ありがとうございます…。」

素直にお礼を言えないのは彼がアスタムの皇太子だから。
グルッペンが狙う最大の敵、その国の王子様が私の目の前に立っていた。

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なな - うん。 いや最推しにこんなんされたらもう本当ヤバいなぁ…((語彙力ッ いやグルちゃんかっこええ~… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - グルさんイケメン…最推しです(*´ー`*) (2017年9月10日 9時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 75さん» 75さんコメントありがとうございます!楽しんで貰えたなら幸いです!!続編も次回作も早くお届けできますよう頑張ります!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月22日 12時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)
75(プロフ) - ひとちん様初めまして。いつも楽しみに読ませて頂いております。この度は完結おめでとうございます!秀逸な作品構成にどきどきしながらページを送っておりました。続編、次回作共に首を長くしてお待ちしてます!体調にはお気をつけてお過ごしくださいませ。 (2017年8月22日 12時) (レス) id: 97ace52c10 (このIDを非表示/違反報告)
ひとちん(プロフ) - 水鈴さん» 水鈴さんコメントありがとうございます!感想とても嬉しいです!!2では二人のその後などを書かせて頂く予定ですので完成したらぜひそちらもご覧になってくれると嬉しいです!これからもよろしくお願いします!! (2017年8月21日 22時) (レス) id: 30a8058165 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひとちん | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年7月23日 23時

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