避けても避けても避けないで！【Ｒｉｐｐｅｒ】

32＿Ripper ページ35

「……誰にも言わないでくださいね。」


そう念押しをすれば、面倒くさそうにしながらも紅茶を啜った。


それでもちゃんと聞いてくれるところは、彼の唯一の長所かもしれない。
なんて言ったら、怒られてしまいそうだから口には出さないが。



ぽつりぽつりと少しずつさっきあった出来事を話せば、ナワーブくんは持っていた紅茶を机に置き真剣に話を聞いてくれているようだった。




「……なんで皮肉言うんだよ、好きなんだろ？ 素直に言えば万事解決だろうに…。」

「…でも、私が素直に自分の気持ちを話したところで嫌われるだけですよ。」


後ろ向きの気持ちになってくる。


「…なんでだよ。話聞いてる限りじゃ、Aもリッパーに好意を抱いていると思うんだけどなぁ。」



それはない、と呟けば不信そうにナワーブくんは私の顔を覗き込んできた。



「…？ 別にそれはねぇんじゃねぇか？ そんなに話したことはないけど、リッパーの事が死ぬほど嫌いっていう訳ではなさそうだし…。」



「……私と、Aさんが出会った日。私たちがこの荘園に招待された日の話です。」


頭の中では、初めて会った時の怯えたような表情をした愛らしいAさんが出てくる。



「…あんな閑静な住宅街を通るなんて、誰かに会おうとしていない限りないですし。それに切り裂きジャック(私)の噂も広まっていて、誰も外に出ていなかったです。殺人鬼に会ったとしても良いと思えるくらいに会いたい方が彼女には居るんです。」


「…だとしても、血縁者かもしれねぇだろ？」

少し困った様子でフォローしてくれるナワーブくんを見て、クスリと笑みを零してしまう。
あぁ、とても優しい人なんだと思った。




「…いいえ、ナイチンゲールさんに聞いたのですが、彼女には婚約者が居たらしいですよ。それもとても仲睦まじい。」


そういうと、ナワーブくんはさすがに何も言えないようで、狼狽えていた。

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