死者一名の戦争 Ⅳ (ページ10)

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「兄さん」

「…何？？」

「俺さ、我々国の城で死ぬつもりだったんだ」

「………」

Aはぽつりと、話始めた。

くしゃくしゃな顔で、涙をこんな風に話すAは、初めて見た。

我慢しながらたまに言葉をつまらせて。

それがまた涙腺を刺激した。

「城で、グルッペンとしんぺいと兄さんに傍に居て貰って、

苦しくなくて、辛くなくて………

世界一、幸せな死に方をするつもりだった。」

「...ああ。」

こいつは国民より、幹部より、俺より。

誰よりも我々国を愛していて、その姿はAの命のようで。

…いや、多分Aは自分の命より国の方が大切だとか考えてるんだろうな。

だからこそ国に執着したり、仲間を大事にしすぎたりする。

そんなこいつが、愛する自国に戻れず、俺一人だけ見守る中限界を迎えている。

最後の望みすらも、

「でも…叶いそうもないな」

叶えられないままで。

それがこいつにとってどれだけ辛いことか、手に取るようにわかる。

Aは、人の迷惑になると思えば何でも自分の中にしまい込んでしまう。

それがどれだけ重要なことか、多分自分でも気づいていないだろう。

自分の問題なのだから、決して人に迷惑をかけてはならない。

そればかりに、気を取られてしまっているのだ。