第十四幕。彼女と藤原在道。 ページ47
切れ長の目に薄い唇、血の気をあまり感じさせない白い人形のような、綺麗な男。
神経質そうな顔立ちは今は愉快そうに歪められ、その眼はまっすぐにAに向けられていました。
見目は違うものの、笑い方はそっくりそのままで……Aには死んだ筈の藤原在道が蘇り、目の前にいるように思えました。
「小さくなったものだね、椿切普賢A。」
どくりと心臓が強く跳ねました。
椿切普賢A、この名前こそAの真名。
そして、何よりも恐ろしかった
ーーおいで、僕の椿切。
あの夢の声でした。
「藤原在道公、なのですか？」
青褪め顔色も体温も無くしてAは声を震わせ、そのAの様子に満足そうに嗤うと男は如何にもと肯定しました。
「はははっ！やはり君には判るか椿切！僕はこのヒトの胎から再びこの世に立った、いやはや、死して千年でこの様に人の世が変わるとは思ってもみなかったけどね。」
「紹介いたしますわ、私の愛しい息子、鷹司在道。うふふ、最初は驚きましたのよ？まさか自分の子が前世の記憶をそのまま引き継いで生まれてきているなんて、想像もしていませんでしたもの。」
うっとりと息子を見る遥香はそっと在道の手を取ってAの元へと誘いました。
「呼び掛けになかなか応えなくて探すのに手間取ったよ。困った子だ、と言ってももう直ぐ僕の近侍になるから躾なんていくらでもできるか。」
その手にはAの刃が握られていました。
「ふふふ、僕はねぇ椿切、君を手放してしまったことを後悔していたんだよ。ずっとね。」
鞘を撫で上げ刀身を抜くと在道はそっと刃に口付けました。
「僕が君を下賜してからは不幸続きだった。最たるものは其れまで何をしても叱責しなかった父上がたかだか農民を斬ったくらいでこの僕を毒殺した事だけどね……死ぬ前に君を下賜した直後、奴が出世したことを思い出して気付いたんだ。ああ、あの刀は幸運の運び手だったのかもってね。君のいく先々を調べてそれが確信に変わったよ。」
「当時流行していた普賢菩薩信仰の影響なのでしょう？娘を助けるためと貴女の作り主は心血を注ぎ込んで貴女を作ったそうではありませんか。」
「まあその娘は薬を貰って直ぐに死んで、父親は入水したそうだけれど。」
在道は頬杖をついて身動きできないAを眺め、その頭に手を置きました。
「ふふ、やっぱりさっき呪いに抵抗したから大分気が弱ってるね？」
椿切普賢A、改め君の名はーー藤原守椿切A。
終幕の前座。或る報道番組にて。→←第十三幕。彼女と急転直下。
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菱神 昂(プロフ) - 特にリクエストはいただかなかったので、祭り会場は小ネタ置き場に改造いたします。 (2015年5月1日 20時) (
レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - 御礼祭リクエスト受付は本日21時からです。リクエストは必ずお知らせを熟読された上でお願いします。ある意味キーワードの代わりとなりますのでよろしくお願いいたします。著者。 (2015年4月30日 14時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - (3k猫*´∀`*){よきかな〜♪さん» コメントありがとうございます！この章から漸く本線が始まるなという感じです。今から更に盛り上がる筈ですのでこれからも椿切と本作をよろしくお願い致します！ (2015年4月9日 23時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
(3k猫*´∀`*){よきかな〜♪ - お〜！だんだん話が盛り上がってきましたね！更新頑張ってください！ (2015年4月9日 19時) (レス) id: fdc932d927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菱神 昂 | 作成日時：2015年3月6日 23時
