第十ニ幕。彼女が与える影響。 ページ45
三日月はフラフラと立ち上がりました。
「A駄目じゃあないか、痛かったろうに……そんなに俺が恐ろしかったか？ああ、ああ、傷から血が、……」
「っ触るな！！」
触れようとした腕をすり抜け、Aは三日月を睨みつけます。
「A、俺を拒むのか？やっと、やっと逢えたのに……」
「拒むも何も、あたしを自分の意のままの傀儡にしようとしたのはそちらだろう！あたしに何をしようとした、答えろ三日月宗近！！」
「ああああ、A！A！」
三日月の頬を伝う涙はAの血と混じり合い、まるで血の涙を流しているようでした。
「A……A……」
「答えられぬ、か。」
「彼がやろうとしたのは恋呪いみたいですわ。」
「高塚管理官殿っ！」
突然入ってきた遥香はごめんなさいと頭を下げて一冊の古書を差し出しました。
『外法ニツキ使用禁ズ。』
表紙には朱書きがされているそれは大分傷んではいるものの、折れたり曲がったりしている様子はありませんでした、一箇所を除いて。
「乞い毒？こんな、人の思いを踏み躙るような呪いが……」
「昔も寵妃争いは凄かったそうですわね？……三日月は精神が限界と言っても過言ではありませんでしたから……昔の書が読みたいと言い出したときは何の疑いもしませんでしたの。それが、こんな……」
遥香の目は痛ましそうにAの手首を見ていました。
「……今回の件、貴女は関知していないと？」
「私の指示だなんてとんでもない！まさか貴女に怪我までさせるなんて……」
遥香は嘘をついているようには見えませんでした。
「A、俺を置いて往くな……A……」
「……また、前の状態に戻ってしまいましたわ……」
狂ったようにAを呼ぶ三日月から目をそらすように遥香は睫毛を伏せて額に手をやりました。
「三日月宗近はずっとAちゃんを待ち続けてて、私たちも貴女を探していましたのよ。そうしたら、三十年前に焼失したって聞いて……それから彼は変わってしまいましたの。ずっとああして貴女を呼び続けていましたわ。」
昔は貴女のよく知る三日月宗近でしたのよ？
遥香の声が聞こえるもののAは三日月から目が離せませんでした。
まるで暗闇に独り残された幼子が母を求めて彷徨う様に、三日月はAを求め続けていました。
《敵》では、ないのか……
《敵》であればどれ程楽だったか……
Aは背伸びしてそっと三日月の頬を流れる赤を拭いました。
第十三幕。彼女と急転直下。→←第十一幕。彼女と彼女の心境の変化。
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菱神 昂(プロフ) - 特にリクエストはいただかなかったので、祭り会場は小ネタ置き場に改造いたします。 (2015年5月1日 20時) (
レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - 御礼祭リクエスト受付は本日21時からです。リクエストは必ずお知らせを熟読された上でお願いします。ある意味キーワードの代わりとなりますのでよろしくお願いいたします。著者。 (2015年4月30日 14時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - (3k猫*´∀`*){よきかな〜♪さん» コメントありがとうございます！この章から漸く本線が始まるなという感じです。今から更に盛り上がる筈ですのでこれからも椿切と本作をよろしくお願い致します！ (2015年4月9日 23時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
(3k猫*´∀`*){よきかな〜♪ - お〜！だんだん話が盛り上がってきましたね！更新頑張ってください！ (2015年4月9日 19時) (レス) id: fdc932d927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菱神 昂 | 作成日時：2015年3月6日 23時
